転倒とは、自分の意思からではなく、地面またはより低い場所に、肘や手などが接触することで、階段、台、自転車からの転落も含まれるとされています。
平成22年度・高齢者の住宅と生活環境に関する意識調査の結果によると、60歳以上の高齢者が自宅内で転倒した場所は、庭が最も多く36.4%、次が居間・茶の間・リビングで20.5%、玄関・ホール・ポーチが17.4%、階段が13.8%、寝室がおよそ10.3%と続きます。
自宅で転倒した人のけがの状況については、けがはなかったが33.3%、打撲が32.3%、すり傷、切り傷が25.6%、ねんざ、脱臼、突き指が9.7%、下半身の骨を折ったが5.6%、縫うことが必要なけが3.6%、上半身の骨を折ったが3.1%となっています。
自宅で転倒した人のうち、骨を折った人は合わせて8.7%ですが、ねんざ、脱臼、突き指を加えると、18.4%となります。打撲や切創に比べると少なくなっていますが、転倒による骨折とIADL・ADLやQOLの低下には大きな関連があり、転倒による骨折には十分に注意が必要であると考えられます。転倒によって骨折しやすい身体の部位は、≪手首≫、≪肩≫、≪大腿骨・頸部≫、≪腰椎・胸腰移行部≫となります。
外出時の屋外での転倒事故については、転んだことがない人が90.7%で、転んだことがある人は9.1%となっています。
転倒の原因には、≪内的要因≫と≪外的要因≫があります。
≪内的要因≫
①加齢:筋力、バランス力、瞬発力、視力、視野、感覚などの変化や低下
②疾病:変形性関節症、脳梗塞後遺症、パーキンソン病、末梢神経障害など
③精神・心理状態:焦り、不安、緊張、興奮、注意力不足など
④薬剤の副作用や多剤服用
など
≪外的要因≫
①履物:脱げやすいもの、滑りやすいもの、足の大きさに合わないものなど
②床や路面の状態:凹凸、段差、滑りやすさ、つまづきやすさなど
③照明:明るさが不十分、不均衡なために、移動に必要な認知や安心感などが得られない
④障害物:電気コード、カーペットなどの端部、滑りやすいマットなど
など
高齢者は、加齢による生理的老化に伴って、足や腰の筋力低下により、歩幅が狭くなったり、歩く速度が遅くなったりすることで、つまずきやすい心身の状況となる可能性が高まります。
運動習慣のある高齢者では、骨指標の上昇や筋力低下がほとんど見られないという調査結果もあります。高齢者が日常生活の中で、自分の体力や体調に合わせて、無理のない範囲で運動を取り入れることは、転倒予防だけでなく、心身の健康やQOLの維持を図ることになると考えられます。
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