便失禁とは、「自らの意思に反して社会的、衛生的に問題となる状況で、肛門から液状または固形の便が漏れる症状」と定義されています。
便を体内から排出する機能には、便をためておく畜便機能をになう≪直腸機能≫と、便を出す便排出機能をになう≪肛門機能≫があります。≪直腸機能≫と≪肛門機能≫とは、二つの機能が協調し合って働いており、片方あるいは両方がうまく働かないと、便失禁が生じることになります。
また、便の禁制(便の排出を禁ずる仕組み)に関与する主な因子は、便性(便の固さ)、排便関連筋群(内・外肛門括約筋、恥骨直腸筋、肛門拳筋)、直腸内圧、直腸肛門の知覚となります。
65歳以上の高齢者を対象にした調査では、便失禁の有症率は7.5%となっています。便失禁は、高齢者の日常生活の活動度低下、脳卒中の既往、社会活動の不参加、生きがいの喪失と有意に相関するという結果が出ています。
≪便失禁の症状≫
●肛門括約筋のゆるみによりトイレに間に合わない
●強度の便秘により硬便が詰まり便秘と下痢を引き起こす
●腹圧がかかり漏れる
●ガスと一緒に漏れる
●痔による痛みや肛門周辺の汚染により漏れる
●便意の喪失などの身体機能の問題や、ストレス反応として
●緊張で便意をもよおす
●知らないうちに出てしまう
など
≪便失禁の分類と原因≫
①切迫性便失禁:急に便意を感じても我慢が出来ずに便が漏れてしまう状態
⇒下痢:感染症や食中毒、薬の副作用、下剤の乱用
②溢流性便失禁:便意が無いにもかかわらず、便が漏れ出てくる状態
⇒強度の便秘や残便
⇒神経系の障害:脳卒中、脊髄神経の損傷、糖尿病など
③機能性便失禁:排便動作がうまく行かないために、便が漏れてしまう状態
⇒運動機能障害、認知症
④腹圧性便失禁:咳やくしゃみなどで漏れてしまう状態
⇒加齢による肛門括約筋の衰え
⇒外傷、手術、出産などによる肛門括約筋の損傷
≪排便・便失禁に対する日常生活の留意点≫
▼食生活⇒食事量、食材の構成
▼活動性⇒座位保持、移動能力
▼認知能力⇒便意の有無
▼手指巧緻性⇒着脱衣、拭き取り
▼排便習慣⇒一定の周期の維持・確立
▼良い排便法⇒いきまず、リラックスした状態
▼嗜好品⇒甘味料、カフェインは蠕動運動を刺激する
など
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