夜間頻尿とは、夜になって就寝し入眠したあとで、排尿のために、1回以上起きなければならないという悩みがあり、慢性的な睡眠不足や日中の眠気などで日常生活に多大な支障を来している状態であります。国際禁制学会では、夜間頻尿は「夜間に睡眠を中断するような排尿」と定義されています。
夜間頻尿は、排尿のために睡眠が中断されて、睡眠の質が低下したり睡眠障害となることだけでなく、暗い中でトイレに行く回数が増えることは、転倒によるけがや骨折の危険が増え、寒い地方では脳梗塞、脳出血、くも膜下出血などの脳卒中、心筋梗塞の誘因となります。また、3回以上の夜間頻尿を有する高齢者は、2回以下の高齢者と比較して、生存率が有意に低い事も報告されています。
夜間頻尿は、前立腺肥大などが原因である高齢の男性に多いものと考えられがちですが、高齢の女性にも多く見られるものとなっています。高齢者では、男女差はほとんど見られず、加齢に伴う生理的・病的老化によって増加し、さらに夜間の排尿回数が増えることで、著しくQOLが低下することになります。
夜間頻尿の主な原因には、≪夜間多尿≫と≪機能的膀胱容量の減少≫、≪睡眠障害≫があります。いずれも加齢に伴う病的老化によって悪化することがあります。
≪夜間多尿≫は、夜間の尿量が1日量の35%を超える場合で、水分の過剰摂取、抗コリン薬、利尿薬、カルシウム拮抗薬の服用、アルコール摂取などによる多尿が原因となります。また、高血圧症では、カテコールアミンの昼と夜との分泌の変化が原因となります。
≪機能的膀胱容量の減少≫は、<前立腺肥大症>、<過活動膀胱>、<間質性膀胱炎>などの病気が原因で、膀胱に尿をためておけなくなり、1回の尿量が減る状態をいいます。
<前立腺肥大症>では、慢性的な下部尿路閉塞によって膀胱壁が肥厚してしまい、膀胱容量が低下して頻尿や夜間頻尿を来たします。
<過活動膀胱>では、蓄尿時において排尿筋が不随意収縮を起こして頻尿、夜間頻尿を来たします。原因には[神経性]と[非神経性]とがあり、[神経性]には脳血管障害、パーキンソン病、後縦靭帯骨化症、脊髄小脳変性症、多発性硬化症などがあり、[非神経性]には加齢、突発性、下部尿路閉塞、骨盤底筋の弱化などがあります。
<間質性膀胱炎>では、膀胱粘膜の透過性の亢進によって、知覚過敏となることにより、頻尿、夜間頻尿を来たします。
≪睡眠障害≫は、高齢者では睡眠が浅く分断されるので覚醒しやすく不眠を来たし、主な疾患としては、種々の不眠症、うつ病、睡眠時無呼吸症候群、パーキンソン病、周期性四肢麻痺障害、むずむず脚症候群などが原因となります。
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