腹痛とは、腹部に痛みを感じることです。腹部にはいろいろな臓器、筋肉、神経、血管などがあるので、なぜ腹部に痛みを感じるのかということを知るには、痛みに対して様々な原因や要因を考えなくてはなりません。
痛みには、痛みの原因によって、≪傷害受容性痛:炎症や刺激による痛み≫、≪神経因性痛:神経が障害されることで起こる痛み≫、≪心因性痛:心理・社会的な要因によって起こる痛み≫に分類されます。【痛み】は、【体温】、【脈拍】、【呼吸】、【血圧】と共に「ヒトの身体や生命を守るための印」、「ヒトの生の証」である【バイタルサイン】と言われています。
ヒトは、痛みを感じることで身体に何らかの異常や異変が生じている事に気がついて、異常や異変に対処することが可能となります。ヒトは、疾病や障害、老化などで痛みを感じ無くなったり、感じにくくなったりすると、身体を襲っている異常や異変の察知と対処が出来なくなり、けがや疾病を繰り返すことになりかねません。
腹痛は、消化器疾患における代表的な症状、自覚症状のひとつとされていますが、腹痛の原因は、必ずしも腹腔内臓器の障害とは限らないと考えられています。腹痛の種類には、≪内臓痛≫と≪体性痛≫があるとされています。
≪内臓痛≫は、管腔臓器壁や腹側壁膜の急速な伸展・拡張や、攣縮性収縮や実質性臓器の腫脹による皮膜の伸展、牽引などが発生原因となっています。内臓痛の症状は、灼熱痛や鈍痛が訴えられます。痛みの部位は、非限局性で、腹部正中に対称性に生じます。
痙攣・伸展が激しい場合には、周期的、間歇的な差し込むような痛みの疝痛が感じられる。嘔吐や発汗などの迷走神経症状を伴うことが多く見られ、体動や体位の影響は、痛みが軽快する場合もありますが、あまり影響は見られません。
≪体性痛≫は、壁側腹膜や腸間膜、横隔膜への物理的あるいは化学的刺激が発生原因となっています。持続性の刺すような痛みで、腹膜刺激症状が多く見られます。障害臓器の近傍に限局して見られ、非対称性で痛みの部位が明瞭で、圧痛点を認めます。嘔吐や発汗などの迷走神経症状は見られず、体動によって悪化が見られます。
<図1>腹痛と疾患
参考:Pain Relief ー痛みと鎮痛の基礎知識(http://www.shiga-med.ac.jp/~koyama/analgesia/index.html)
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