東京都老人医療センターで亡くなられた5,000人の高齢者(平均年齢82歳)以上の解剖結果によると、51%に【がん】があり、男性は56%で、女性は46%でありました。ヒトは死の転帰を迎えるときには、約2人に1人の割合で【がん】を持っていることになります。
ヒトは死ぬときに、2人に1人は【がん】を持っているといっても、死因ががんであるとは限らず、他の疾病で亡くなって、解剖を行ったら【がん】が見つかったという場合が少なくないとのことであります。
壮年期から74歳の死因:【がん】>[心臓や脳の血管障害による合計]
75~79歳の死因:[心臓や脳の血管障害による死因の合計]>【がん】
85歳以上の死因:[心臓血管障害]>【がん】、[脳血管障害]>【がん】
75歳以上のヒトでは、【がん】を持っていたとしても、[心臓血管障害]や[脳血管障害]によって亡くなるヒトが増えてくるということが言えます。
《高齢がん患者における高齢者総合的機能評価の確立とその応用に関する研究》(http://www.chotsg.com/jogo/components/img/houkokushoHh24.pdf)の中で、新規に悪性リンパ腫または多発性骨髄腫と診断された65歳以上のがん患者に対して、治療開始前に日常生活活動度、抑うつ、認知機能障害などを含む機能評価が行われました。その結果では、治療に対して頻度の高い問題として、合併症・47%、高次脳機能障害・35%、栄養状態・35%、日常生活活動度の低下・32%となりました。
高齢者のがん治療では、若年者に比べると生存期間の延長効果は小さくなる一方で、心身にとって有害な事象が出現する頻度や程度が高くなる傾向が見られることから、治療を受ける高齢者にとって、治療を行う[リスク(損失)]と治療を行う[ベネフィット(利益)]との間のバランス、リスク・ベネフィットバランスがリスク側に傾いてしまう可能性が高くなると考えられます。
高齢者のがん治療を行うに当たっては、QOLの悪化が感じられるまでの期間と、平均余命との間でのリスク・ベネフィットバランスが重要であると考えられます。リスク・ベネフィットバランスをベネフィット側に傾けるためには、がん治療を行いながらも住み慣れた生活環境で自立した日常生活を維持するために、アセスメントを行うことが必要であると考えられます。
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