呼吸不全は、気道に障害があって空気が肺に到達しにくくなったり、肺の疾病で酸素が血液中に取り込まれにくくなった場合に生じます。また、気道や肺に異常がなくても、神経の疾病により呼吸筋の筋力が低下したり、胸郭の変形によって肺が十分に膨らまなくなったりした場合や、呼吸中枢の働きが弱くなった時などで生じます。
呼吸不全とは、原因となる疾病や障害があり、それらが悪化したことによって、動脈血の酸素や二酸化炭素の濃度に異常を来して、低酸素状態(低酸素血症)や高二酸化炭素状態(高炭酸ガス血症)が生じるものであり、不要な炭酸ガスが体内に貯まらない≪Ⅰ型呼吸不全:PaCO2≦45mmHg≫と貯まる≪Ⅱ型呼吸不全:PaCO2>45mmHg≫の2種類があります。
≪Ⅰ型呼吸不全≫の原因
●重症肺炎
●気管支喘息発作
●間質性肺疾患
●肺循環障害
●緊張性気胸
●胸水貯留
など
≪Ⅱ型呼吸不全≫の原因
●気道閉塞
●呼吸中枢の抑制
●外傷(頭部、胸部)
●神経疾患
など
呼吸不全には、呼吸不全の状態が1ヶ月以上続く場合を≪慢性呼吸不全≫、そうでない場合を≪急性呼吸不全≫として分類しています。
≪慢性呼吸不全≫の原因
●肺気腫
●結核後遺症
●間質性肺炎(肺線維症)
●気管支拡張症
●胸郭変形
●肺がん
●神経筋疾患
など
≪急性呼吸不全≫の原因
●肺炎
●喘息発作
●薬物中毒
●肺塞栓症
など
急性呼吸不全は、呼吸不全の状態が慢性化することは稀であるとされています。慢性呼吸不全は、呼吸不全の状態に対して長期治療が必要となります。慢性呼吸不全では、呼吸不全の状態が急激に悪化する急性増悪が見られることがあります。
呼吸不全によって見られる身体症状には、≪低酸素血症≫によるものと≪高二酸化炭素血症≫によるものがあります。
≪低酸素血症≫
●頻呼吸
●チアノーゼ
●頻脈
●運動機能および判断機能の低下
●錯乱・譫妄
●意識喪失
●血圧低下
など
≪高二酸化炭素血症≫
●頭痛
●めまい
●血圧上昇
●四肢の温もり(血管拡張による)
●振戦(羽ばたき振戦)
●錯乱
●意識喪失
●縮瞳
など
慢性呼吸不全の急性増悪の予防には、呼吸器の感染症に罹患しないための取り組みを、日常的に行われることが重要と考えられます。うがい、手洗い、歯磨きなどの感染症予防だけでなく、バランスのとれた食事や十分な睡眠、疲労の解消、適度な運動(過度な運動は厳禁)によって、免疫機能を高めることが必要とされています。
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