インフルエンザは、インフルエンザ・ウイルスが引き起こす流行性の感染症です。我が国では、気温が下がり空気が乾燥する冬季に、ウイルスの活動が活発化して、毎年11月に入ると発生が始まり、翌1月と2月が流行のピークとなり、3月になると流行は終息に向かって行きます。
インフルエンザ・ウイルスには、A型、B型、C型という3種類のウイルスに大別されますが、そのうちで感染の流行を引き起こすのは、A型とB型です。インフルエンザ・ウイルスには、ウイルスの表面にヘマグルチニン(HA)とノイラミニターゼ(NA)という2種類の突起があり、それぞれH、Nと略記されます。
A型インフルエンザ・ウイルスは、HAに16種類、NAに9種類の型(亜型)があることから、HAとNAとの組み合わせで、合計144種類の亜型を持つことになります。インフルエンザの流行期に示される方の表示は、インフルエンザ・ウイルスの型とその亜型(HAとNAとの組み合わせ)で、A/H1N1、A/H3N2などと示されます。
インフルエンザ・ウイルスには、その構造が変化する変異が常にあって、HAやNAが同じ型の中で少しずつ変異する≪連続変異≫と、HAやNAが全く違う型に置き換わってしまう≪不連続変異≫があります。インフルエンザの流行は、同じインフルエンザ・ウイルスの型の中で≪連続変異≫が起きていることから、毎年流行が繰り返されると考えられます。
インフルエンザの症状は、高度の発熱、頭痛、腰痛、筋肉痛、全身倦怠感などの全身症状が急激に現れて、全身症状と同時もしくはやや遅れて、鼻汁、咽頭痛、咳などの呼吸器症状が出現します。熱が急激に上昇して、38~40℃の高熱状態が3~4日続いた後に、熱発の解消と共に、全身症状や呼吸器症状は次第に回復して、1週間程度で快方に向かうとされています。
高齢者がインフルエンザに罹患した場合には、高熱と全身倦怠といったインフルエンザの典型的な症状を示すことがなく、微熱や呼吸器症状が長引く場合が少なくないといわれています。65歳以上の高齢者では、罹患率は少ないものの、死亡率は著しく高いことから、インフルエンザのことを「老人の最期の生命のともしびを消す疾患」といわれています。
≪インフルエンザの高リスク群≫
●65歳以上の高齢者
●妊婦
●乳幼児
●慢性呼吸器疾患(COPD、喘息、など)
●慢性心疾患(僧帽弁膜症、うっ血性心不全、など)
●代謝性疾患(糖尿病、アジソン病など)
●腎機能障害
●免疫機能抑制・不全状態(ステロイド等の薬剤投与、自己免疫疾患、AIDSなど)
●肝機能障害
など
≪インフルエンザの予防≫
①栄養と休養を十分に取る
②人ごみを避ける
③適度な温度と湿度を保つ
④外出後の手洗いとうがいの励行
⑤マスクの着用
インフルエンザ・ワクチンの接種を行っても、インフルエンザ・ウイルスへの感染を、完全に防ぐことが出来るものではありません。インフルエンザ・ウイルスに感染した場合に、重篤な合併症や死亡を予防し、健康被害を最小限に留めることを期待して、インフルエンザワクチンの接種が行われるものであります。
インフルエンザ・ワクチンは、各年のインフルエンザ流行シーズンのインフルエンザ・ウイルス型(株)の流行を、WHOの推奨に基づいて各国の判断を加えて予測してワクチンが作られています。インフルエンザ・ワクチンの持続期間は、約5ヶ月となっていることから、インフルエンザの予防には、インフルエンザ流行シーズン前にワクチンの接種が求められています。
<図1>インフルエンザの基本ポイント(出典:インフルエンザ施設内感染予防の手引/厚生労働省)
<図2>インフルエンザとかぜ
参考:http://influenza.elan.ne.jp/index.php(インフルエンザ情報サービス/中外製薬)
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