結核は、1950年までは日本人の死亡原因の第一でしたが、その後の生活水準や衛生環境の向上、医療・医学の進歩などによって、患者数、死亡者数は著しく減少し、結核の高蔓延状態から脱却しました。ところが、1978年以降から罹患率の減少が低下し、1998年には増加に転じてしまい、その後は罹患率は減少しているものの未だ結核の中蔓延状態にあります。
結核の罹患率は、未成年では欧米の低蔓延国と同等で、50歳代以降になると高くなり、65歳以上で急上昇しています。65歳以上の高齢者の罹患率が高い原因は、1950年までの結核の高蔓延時代に生を受けた世代が、その当時に結核菌に曝露して感染をしたものの発病することがなく、結核菌が保菌(冬眠)状態となったままで高齢になって、免疫機能が低下することで結核が発病(再燃)した二次結核症が多数を占めているためと考えられます。
結核の症状は、咳、痰、血痰、胸痛などの呼吸器症状と、発熱、冷汗、倦怠感、体重減少などの全身症状が見られ、肺炎やインフルエンザなどの呼吸器疾患と異なり、症状が緩やかに進んで行くとされています。高齢者では、全身衰弱や食欲不振、体重減少などの症状が見られるものの、自覚症状が乏しいことがあるため注意が必要とされています。
高齢者の結核には、全身状態や免疫機能を低下させるような、脳血管障害、悪性腫瘍、肝疾患、循環器疾患、慢性呼吸器疾患、膠原病、糖尿病などの疾病や、寝たきりや嚥下障害、低栄養等が発病(再燃)の要因になっていると考えられています。
高齢者の結核で特徴的な合併症としては、65歳以上の前期高齢者では生活習慣病が、75歳以上の後期高齢者では活動度低下を来しやすい疾病が多く見られ、85歳以上の超高齢者には、脳血管障害や寝たきりが高率であるという報告があります。
≪結核患者早期発見の留意点≫
【全体の印象】
●なんとなく元気がない
●活気がない
【全身症状】
●37.5℃以上の発熱
●体重の減少
●食欲不振
●全身の倦怠感
【呼吸器系の症状】
●咳
●痰や血痰
●胸痛
●頻回な呼吸や呼吸困難
現代の結核は、高齢者は、過去に結核菌に曝露したものの発症することなく、高齢となり発症した二次結核症が多く、若年者については、結核菌に曝露されることなく過ごして来たことから、感染しやすい傾向にあることから、高齢者施設等では、入所者や通所者から若い職員への結核感染が起こりやすい状況にあると言えることから、利用者だけでなく職員に対しても、結核患者早期発見の留意点に、常に注意することが必要となります。
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