白癬は皮膚糸状菌という真菌(カビ)によって生じる感染症の名前で、白癬となる部位によって異なる名称があるが、いずれも原因菌は皮膚糸状菌であります。皮膚糸状菌のことを白癬菌と、一般的には言われてます。皮膚糸状菌は、世界に40種類以上存在しています。我が国では、10種類ほどの皮膚糸状菌が、ヒトに白癬を起こすことがわかっています。
皮膚糸状菌は、ヒトばかりではなく動物にも感染して、動物によって感染する菌の種類が異なります。動物からヒトへの感染も菌によっては起こることがあり、皮膚糸状菌に感染している犬や猫との接触により、顔や身体、髪の毛などの接触部位に感染することがあります。
皮膚糸状菌は、ケラチンというタンパク質を栄養源にして生きる真菌です。ケラチンは、皮膚の表面の各層に多く存在することから、皮膚糸状菌は、皮膚の表面に感染して繁殖するようになります。皮膚が変化したものが毛や爪なので、毛や爪にもケラチンがあることから皮膚糸状菌が感染することになります。
白癬には、患部別に名称・俗称があります。
●足⇒足白癬/俗称:水虫
●股間⇒股部白癬/俗称:いんきんたむし
●頭髪⇒頭部白癬/俗称:しらくも
●爪⇒爪白癬
●手⇒手白癬
●その他の体表⇒体表白癬/俗称:ぜにたむし
●皮膚内部に侵入⇒深在性白癬
白癬の症状には、足白癬で見られる3種類の型とその他の白癬に特徴的な症状があります。
①趾間型:足趾間の皮が剥けたり、白くふやけたりする
②小水疱型:足の裏に小さな水膨れが生じ、水膨れが破れると皮が剥ける
③角質増殖型:足の裏にヒビやあかぎれのようになって、ひび割れを起こしたり足裏が硬くなる
●爪白癬:爪の先が厚くなり、白~黄色に濁る
●体部白癬:米粒大の紅色の丘疹が出来て、次第に周囲に円状に広がり、炎症や痒みを伴う
●股部白癬:多くは太ももの内側に生じて、赤い隆起と激しい痒みが現れる
●手白癬:足白癬と同様の症状。手白癬の発症割合は、足白癬の1割程度といわれている
●頭部白癬:頭部に円形や楕円形の脱毛巣(禿)を作る。
白癬は、足白癬>爪白癬>体部白癬>股部白癬>手白癬>頭部白癬の順に患者数が多いとされています。
足白癬は、季節変動の見られない角質増殖型を除いて、5月に増え始めて、夏に増加し、冬に減少する傾向が見られます。皮膚科に新規で受診する患者のうちで、真菌症の割合は約12%で、そのうち88%が白癬であるとされています。また、10人に1人は爪白癬があるという推計があり、爪白癬には季節変動が無いことから、常に1000万人以上の患者がいると考えられます。
爪白癬は、19~30歳・3.5%、31~39歳・5.5%、40~49歳・14.8%、50~59歳・22.3%、60歳以上・40.4%と、年齢が上がるに従って頻度が増えて、60歳以上の高齢者の40%が罹患しているという調査報告があります。
皮膚糸状菌感染症・白癬の診断は、皮膚の角層、爪、毛などの皮膚糸状菌が感染している部位を取って、顕微鏡で観察・確認することで行われます。
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