動脈硬化は、加齢に伴う生理的老化により誰にでも起きるものでありますが、生活習慣病などによって病的老化が引き起こされることで、脳梗塞や虚血性心疾患(狭心症、心筋梗塞)などの危険性が高まってしまいます。動脈硬化は、脳や心臓に限ったことではなく、全身の動脈に生じている可能性があるものです。
動脈硬化が下肢の動脈に生じて、下肢の血管が狭窄するか閉塞するために、下肢の血流が不足することで、下肢の痛みや歩行障害が引き起こされる疾病です。疾病が進行することで、下肢の潰瘍・壊疽を起こす可能性が高くなる重症(下肢)虚血の状態となった場合には、病変部などの切断に至る危険性が高くなります。
閉塞性動脈硬化症の患者数は、人口の1割以下とされていますが、70歳以上になると約20%に達するといわれており、危険因子の一つとして85歳以上が挙げられています。閉塞性動脈硬化症と他の動脈疾患との間には、合併する可能性が高く、5年後には約20%が脳心血管系疾患を発症するといわれています。そして、脳心血管系疾患が原因となって約15%が死の転帰をたどるといわれており、合併疾患に十分な注意が必要と考えられます。
閉塞性動脈硬化症の症状は、4つの病期に分類されています。
Ⅰ度:無症候⇒冷感やしびれを感じることがある
Ⅱ度:間歇性跛行⇒ある一定の歩行距離で痛みにより歩けなくなり、しばらく休むとまた歩けるようになる
Ⅲ度:安静時疼痛⇒安静時にも痛みが現れる。疼痛のために睡眠障害が生じる。
Ⅳ度:虚血性潰瘍・壊疽⇒皮膚に潰瘍が起きたり、足先に壊疽が起きたりする
閉塞性動脈硬化症の危険因子は、①喫煙、②生活習慣病(糖尿病、高血圧症、脂質異常症など)、③慢性腎不全などがあります。喫煙者が閉塞性動脈硬化症となった場合に、間歇跛行が生じる危険性が非喫煙者の3倍になり、糖尿病の患者が重症虚血となり下肢切断率は5.1倍になるとされています。
閉塞性動脈硬化症の日常生活での留意点としては、①禁煙、②生活習慣病の予防や改善、③適度な運動、④栄養の過不足の無い食習慣、⑤歯周病の治療と口腔ケアなどが必要と考えられます。
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