糖尿病は、血糖値が高い≪高血糖≫の状態が続く疾病です。糖尿病の症状は、はじめはほぼ無症状ですが、治療や日常生活習慣の見直しをしないまま放置していると、目や腎臓、神経系、心臓、脳などの臓器や器官に余病・合併症が現れることになります。
糖尿病の進行と合併症を防ぐためには、食事療法と運動療法、薬物療法を行う事で、血糖値をコントロールして≪高血糖≫にならないようにすることになります。
糖尿病の高齢者の特徴は、健康状態の個人差が大きいことが上げられます。加齢による生理的老化は、個体差が大きいものでありますが、糖尿病の高齢者の場合は、糖尿病発症からの期間、余病・合併症の状態、糖尿病に対する理解や日常生活環境によって大きな差が見られます。
糖尿病以外の病気を併せ持っていることが多いこともあります。糖尿病だけでなく、高血圧症、脂質異常症、動脈硬化症、骨粗訴訟症、認知機能低下や糖尿病性腎症・網膜症・神経障害などの疾病が、糖尿病の余病・合併症として起きることもあります。多くの疾病を持っていることから、服用しなければならない、薬剤の種類も量も多くなってしまいます。
体調の変動が、健常高齢者に比べると大きくなることが見られます。糖尿病や余病・合併症があるために、身体全体の機能や抵抗力が衰えており、そのために体調の変動が顕著に現れてしまうことになります。高齢者では、腎臓機能の生理的老化が見られますが、糖尿病による病的老化に伴い糖尿病性腎症が合併している場合には、感染症や熱中症などの発熱や下痢、脱水などは、腎臓の著しい機能低下や血糖値の急激な上昇を引き起こし、生命予後にかかわる事態となる場合があります。
要介護状態や独居などで治療が難しいこともあります。要介護状態や認知障害などのために、ひとりでは食事療法、運動療法、薬物治療が正しく行えなかったり、さらに独居のために介護や見守りを行う者がない場合には、糖尿病の療養への援助を受けることが困難な状況であるために、血糖値のコントロールが図れず、病状の安定につながりにくくなってしまいます。
糖尿病の高齢者への留意点について、食事療法では、①嗜好や食習慣の変更が難しいことに対して、QOLを考えた日常生活が過ごせるよう対応を検討すること、②「もったいないから」と残さず食べることは、糖尿病を悪くすることになるので、カロリー制限を超えないように注意すること、③摂食障害や嚥下障害などにより少食すぎると栄養不良となる危険性があることから、適切な一日に必要とされる摂取カロリーと栄養素を過不足なく摂取することに配慮することなどがあります。
運動療法では、①運動の強度・時間に注意して、併発している疾病の悪化とならない範囲で行えるように、主治医の指導・指示を受けること、②運動機能の低下や神経障害がある場合には転倒に注意すること、③運動中の低血糖に備えてブドウ糖や飴など携帯し、脱水・熱中症を防ぐために水分補給をこまめに行うようにすること、④天候や体調が悪い時には休むこと、競争になるような運動は避けることなどがあります。
薬物療法では、①高齢のために低血糖の症状が現れにくく、低血糖と判断出来ない場合もあり、低血糖発作により意識消失する可能性が大きいことに注意が必要となること、②薬の種類や量が多くなることによる飲み忘れや飲み間違いに注意や配慮すること、③腎臓機能の低下により、薬の排泄に時間がかかるため、副作用や相互作用に注意することなどがあります。
日常生活では、①QOLに配慮した血糖コントロールを目指すこと、②体調不良には「歳のせい」にせずに早めに対応すること、③脱水や熱中症に注意すること、④節酒、出来れば禁酒に心がけることなどがあります。
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