骨粗鬆症のWHOの定義は、「骨粗鬆症は、低骨量と骨組織の微細構造の異常を特徴とし、骨の脆弱性が増大し、骨折の危険性が増大する疾患である」となっています。骨粗鬆症とは、骨が弱くなり骨折しやすくなる疾病と言えます。40歳以上の骨粗鬆症の患者数は1280万人(2005年)と推計されており、東京都民(東京都・人口:1335万人)がほぼ全員骨粗鬆症である位の患者数となっています。
骨は、外側の皮質骨という硬い部分と、内側の海綿骨という海綿(スポンジ)状の部分から出来ています。皮質骨は、長骨の中央部分にあり、身体を支える働きをしています。海綿骨は、皮質骨の内側にあり、骨梁という細い繊維状の骨が、軽くかつ強度を保つためのハニカム構造と同じように、海綿(スポンジ)のような構造となることで、骨の強度と骨の形を保ちながら軽量化を図っています。
骨には、古くなった骨を溶かして、カルシウムを血液中に送り出す骨吸収を行う破骨細胞と新しい骨を作る骨形成を行う骨芽細胞があり、骨のリモデリング(骨代謝)を行っています。骨代謝を行う、破骨細胞、骨芽細胞は、骨の表面積に比例して存在するため、皮質骨と海綿骨とを比べると、1:10の表面積比となり、海綿骨には皮質骨の10倍の破骨細胞と骨芽細胞があることになります。
骨代謝は、皮質骨よりも海綿骨で活発に行われ、骨代謝のバランスが崩れて、破骨細胞の働きが亢進してしまうと、海綿骨が多い細胞ほど骨量が減少して骨が脆弱になってしまい、骨折の危険性が高くなります。
骨粗鬆症は、骨代謝のバランスが崩れて、破骨細胞の働きが骨芽細胞の働きに対して亢進することによって、骨量が減少して脆弱になってしまうことであります。骨粗鬆症の発症に、骨量の減少が注目されて来ていましたが、骨の強さ(骨強度)は、骨の量(骨密度)だけでなく骨の質(骨質)が影響することにも注目されるようになり、≪骨強度=骨密度(骨強度に影響する比率:70~80%)+骨質(20~30%)≫と考えられるようになりました。
ヒトの骨は、成長に伴って骨量を増やして行き、20歳頃に最大骨量となります。最大骨量(ピーク・ボーン・マス)は、およそ40歳まで維持され、その後は徐々に低下して行きます。男性は、ゆっくりと減少して行きますが、女性の場合は、閉経に伴い女性ホルモンの原因によると考えられる、骨量の減少が急激に起こります。
骨代謝のバランスは、【0~20歳:骨形成≫骨吸収】、【21歳~40歳:骨形成=骨吸収】、【40歳~:骨形成<骨吸収】となりますが、女性の場合は、【閉経後:骨形成≪骨吸収】となってしまいます。
骨量の減少と骨質の減少は、加齢に伴う生理的老化であり、誰にでも生じるものでありますが、骨粗鬆症は、加齢に伴う病的老化によるものと考えられます。骨粗鬆症は、我が国では、脆弱性骨折経験が有る人では、骨密度が若年成人平均値の80%未満、脆弱性骨折経験の無い人では、同じく70%未満が診断の基準になっています。
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