肺炎とは、さまざまな病原微生物の感染により、肺に炎症が起こった状態であります。高齢者は、免疫機能の低下や、低栄養、咳反射の低下、気道の繊毛運動の低下、嚥下障害、薬物吸収能の低下などにより肺炎に罹患しやすくなっています。
肺炎は、通常は原因となるウイルスや細菌などの病原微生物が、呼吸に伴って鼻や口から身体の中に侵入し、肺に侵入した病原微生物の感染力がヒトの免疫力に勝った場合に発症します。高齢者の場合には、生理的・病的老化に伴う嚥下機能や咳反射の低下などのために、口腔内常在菌や食物、胃内容物などが意識されることなく誤嚥されてしまう、不顕性誤嚥によって発生する誤嚥性肺炎が多く見られるようになります。
肺炎は、日本人の死因の第四位となっており、65歳以上の高齢者の死因では第一位となっています。肺炎の症状として、咳、熱発、悪寒、胸痛、喀痰、呼吸困難が見られますが、高齢者の場合には、熱発や咳などの症状が見られず、むせや倦怠感、食欲不振、意識障害、元気がなくなるなど、肺炎とは無関係と思われる症状が現れる場合が多いことから、特に脳梗塞などの後遺症がある方には、不顕性誤嚥及び身体状況の把握と誤嚥性肺炎の関連について、注意が必要であると考えられます。
誤嚥性肺炎の予防は、≪飲食の意識付け≫、≪誤嚥予防の体位保持≫、≪口腔ケア≫などがあります。誤嚥性肺炎は、繰り返されることが多い事から、≪飲食の意識付け≫、≪誤嚥予防の体位保持≫、≪口腔ケア≫などが、日常的なケアとして実践されることが必要と考えられます。
嚥下反射、咳反射の低下した高齢者では、睡眠中に約70%の方に不顕性誤嚥が見られるという報告があることから、経口摂取を行っていない方であっても、不顕性誤嚥は起きており、≪口腔ケア≫は、誤嚥性肺炎の予防には、総ての高齢者に対して必要な対策であると考えられます。
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