2010年の国民健康・栄養調査によれば、30歳以上の日本人男性の60%、女性の45%が収縮期血圧140mmHg以上または拡張期血圧90mmHg以上、または降圧剤服用中であることから高血圧と判定されています。高齢者の高血圧有病率は、60歳代:男性・65.6%、女性・62.3%、70歳代:男性・80.8%、女性・71.2%となっています。日本人の高血圧有病者数は、約4300万人と試算されています。
日本の脳卒中の年齢調整死亡率は、1960年代にピークを迎えた後に急速に低下しました。人口10万人当たり、1965年:男性・361人、女性・244人、2011年:男性・47人、女性:26人となっています。この死亡率の低下は、血圧水準(平均値)の低下と大きく関連していると考えられており、1961年と2010年とを比べると、30歳代から70歳代までの各年齢階層すべてに、収縮期血圧平均値(最高血圧)が10~20mmHgの低下を示しています。
50年間の血圧水準の低下は、健診などによる高血圧スクリーニングの普及や降圧剤による高血圧治療の進歩と普及、食塩摂取量低下などの生活習慣・生活環境の変化によって生じたものであると考えられています。脳卒中の死亡率の著しい低下が、血圧水準の低下によって見られたと考えられるものの、高血圧は、脳卒中及び心疾患の最大の危険因子であることには、依然として変わりがないことは明らかであります。
<図1>高血圧は心血管病(脳卒中、心臓病)の最大の死亡リスク因子(出典:高血圧治療ガイドライン2014)
高血圧は、生活習慣病と言われており、日常の生活習慣にその発症の原因の多くがあると考えられています。そのために、高血圧の発症予防には、生活習慣の確認と見直しが必要となります。
<図2>高血圧の病歴確認(出典:高血圧治療ガイドライン2014)
<図3>高血圧による臓器障害と心血管病(脳卒中、心臓病)(出典:高血圧治療ガイドライン2014)
≪生活習慣の修正のポイント≫
1.生活習慣の修正は、高血圧予防や降圧薬開始前のみならず、降圧薬開始後においても重要である。
2.減塩:減塩目標は、食塩6g/日未満である。
3.食事パターン:野菜・果物を積極的に摂取し、コレステロールや飽和脂肪酸の摂取を控える。魚(魚油)の積極的摂取も推奨される。
4.減量:体格指数(BMI:体重(kg)/[身長(m)**2])25kg/㎡未満が目標であるが、目標に達しなくとも4kgの減量で有意の高圧が得られる。
5.運動:有酸素運動を中心に定期的に(毎日30分以上を目標に)運動を行う。
6.節酒:節酒を行う。
7.禁煙:禁煙の推進と受動喫煙の防止に努める。
8.その他:防寒や情動ストレスの管理などを行う。
9.複合的な生活習慣修正はより効果的である。
(出典:高血圧治療ガイドライン2014)
高血圧とQOLについて、高血圧治療ガイドライン2014では、「全般的快適感、身体症状、性機能、労働能率、情緒状態、知的機能、生活に対する満足度、社会活動状況なぢを客観的かつ総合的に評価する」としています。そして、「他の重篤な疾患に比べると高血圧がQOLに及ぼす影響は少ないが、高血圧を意識すること自体がQOLを障害する」としています。さらに、「血圧が高いほど感情の反応、家庭生活、社会生活、睡眠そして胃腸系の身体症状に問題が多くなる。また、QOLは加齢により低下するとともに高齢者では個人差が大きくなる」としています。
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