うつ病は、精神的なエネルギーが低下して、気分がひどく落ち込んだり、何事にも興味を持てなくなったり、おっくうになったり、なんとなく怠かったりして、強い苦痛を感じてしまい、ほとんど毎日のように、日常の生活に支障が現れるまでに至った状態であります。
うつ病の症状として代表的なものは、①強いうつ気分、②興味や喜びの喪失、③食欲の障害、④睡眠の障害、⑤精神運動の障害(制止または焦燥)、⑥疲れやすさ、気力の減退、⑦強い罪責感、⑧思考力や集中力の低下、⑨死への思いが上げられます。
高齢者のうつ病の特徴は、典型的なうつ病の特徴を示す人は、1/3から1/4と言われています。そして、うつ病の症状がそろっていない頻度が高く、うつ病である事が見逃されやすいくなっています。また、悲哀の訴えが少なく、気分低下やうつ思考が目立ちませんが、意欲や集中力の低下、精神運動遅滞が目立ちます。
心気的な訴えが多く、身体的な不健康と意欲・集中力の低下や、認知機能の低下、記憶力の衰えに関する訴えが、うつ病の症状として表れている場合があります。抑うつ気分と記憶に関する主観的な訴えとは強く関連しており、特に65~75歳の高齢者でその傾向が強く、認知症外来を受診する患者の5人に1人はうつ病性障害であると言われており、認知症とうつ状態(仮性認知症)との鑑別が重要になっています。
軽症のうつ病は、身体的な不健康と関連が有り、意欲・集中力の低下や、認知機能の低下が多く見られるます。高齢者のうつ病は、軽症に見えても中核的なうつ病に匹敵するような機能の低下が見られることが多く、さらに中核的なうつ病に発展することも多いことから、うつ病の症状が軽そうに見えるからと言って、決して軽視してはなりません。
不安症状がしばしば併存することが見られることもあり、不安が前景にあると、背後にあるうつ病を見落としてしまうことがあるので注意が必要とされています。
器質的原因、薬物起因性のうつ病は、若年者よりも高齢者で多く見られます。また、脳血管性病変に関連する「血管性うつ病」の存在が考えられていて、脳血管性障害の患者はうつ病の可能性が高いと考えられるようになって来ています。
うつ病にかかっている人に対する対応のしかた。
①対象者のペースに合わせて負担をかけないよう日常生活を援助する。
②心配しすぎない。
③励まさない。
④うつ病の原因となる生活背景を理解して調整する。
⑤原因を追及しすぎない(悪者探しをしない)。
⑥重大な決定は先延ばしにする。
⑦ゆっくり休むことが出来るように、安心して十分に休息できる環境を調整する。
⑧抗うつ薬の効果と副作用とを把握して適切に対処して、薬をうまく利用する。
⑨時には距離をおいて見守る
<図1>うつの心得・その1
<図2>うつの心得・その2
<図3>うつの心得・その3
<図4>うつの心得・その4
図2~5出典:高齢者のうつについて/厚生労働省
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