フレイルティ(frailty:虚弱)は、「加齢に伴う種々の機能低下(予備能力の低下)を基盤とし、種々の健康障害に対する脆弱性が増加している状態」と定義されており、健康障害に陥りやすい状態をいうものと考えられます。健康障害の中には、≪生活機能障害≫、≪転倒≫、≪ADL障害≫、≪要介護状態≫、≪独居困難≫、≪疾病発症≫、≪入院≫、≪生命予後≫などが含まれます。フレイルティは、加齢に伴う生理的老化と病的老化によって生じた状態であると考えられます。
フレイルティは、①体重減少、②主観的疲労感、③日常生活活動量の減少、④身体能力(歩行速度)の減弱、⑤筋力(握力)の低下のうち3項目に該当した場合には、フレイルティとされ、1~2項目が該当する場合には、フレイルティ前段階と定義されています。
フレイルティの中の定義のうち、④身体能力の減弱と⑤筋力低下は、サルコペニアの診断基準にもなっており、フレイルティとサルコペニアとは、関連性の強いものであると考えられます。
<図1>フレイルティ・サイクルとサルコペニア
フレイルティの要因として、●低栄養、●サルコペニア、●基礎代謝低下、●疲労・活力低下、●筋力低下、●身体機能低下、●活動度低下、●エネルギー消費量低下、●食欲低下、食物摂取量低下があると考えられています。フレイルティの要因が関連し合って、フレイルティ・サイクルを形成していると考えられており、低栄養⇒サルコペニア⇒・・・⇒食欲低下・摂取量低下⇒低栄養⇒・・・⇒低栄養という負のスパイラルを描くとされています。
フレイルティ・サイクルは、低栄養に始まり、サルコペニアを経て、低栄養に復る(ただし一段重症な低栄養になる)ことが繰り返されるという、デス・スパイラルであると考えられます。デス・スパイラルの行く先は、いずれは死に至るゆっくりとした過程であり、老衰という言葉がふさわしいような経過と思われます。
フレイルティ・サイクルは、加齢に伴う生理的老化によるものだけでなく、病的老化によっても引き起こされるものであり、デス・スパイラルをライフ・スパイラルに変えることが可能なものであると考えられます。
フレイルティの要因に、様々な栄養状態に関連する項目が含まれており、サルコペニアと同様に、規則正しい食生活を送ることで、良質のタンパク質や栄養素を毎食摂取しながら、適切な運動を行う事で、生活機能の維持・改善を図り、QOLを高めて行くことが、フレイルティ・サイクルのデス・スパイラルをライフ・スパイラルに変えて行くことが出来ると考えられます。
602106