サルコペニアは、「加齢に伴う筋力の減少、又は老化に伴う筋肉量の減少」と定義されています。サルコペニアは、生理的老化による≪原発性サルコペニア≫と病的老化による≪二次性サルコペニア≫に分類されます。サルコペニアの定義(診断基準)は、ヨーロッパ老年医学会、栄養学に関連する4つのヨーロッパ又は国際学会が共同で、European Working Group on Sarcopenia in Older People(EWGSOP)を立ち上げて提唱されたものです。
≪サルコペニアの(定義)≫
1.筋肉量減少
2.筋力低下(握力など)
3.身体機能の低下(歩行速度など)
サルコペニアと診断される条件は、上記の項目1に加え、項目2または項目3を併せ持つ場合とされています。
≪サルコペニアの分類≫
Ⅰ.原発性サルコペニア
●年齢が関与したサルコペニア:年齢以外は明らかな原因なし
Ⅱ.二次性サルコペニア
●活動量に関連したサルコペニア:ベッド上安静、不活発な生活習慣、体調不良、無重力状態
●疾病が関与するサルコペニア:進行した臓器不全(心臓、肺、肝臓、腎臓、脳)、炎症性疾患、悪性腫瘍、内分泌疾患
●栄養が関連するサルコペニア:摂食不良、吸収不良、食思不振
サルコペニアの原因は、生理的老化によるものと、活動量、疾病、栄養が影響する病的老化と考えることが出来ます。サルコペニアの必要条件は筋肉量減少で、十分条件が筋力低下もしくは身体機能の低下となります。筋肉量は、筋肉のタンパク質同化作用に大きく影響されます。タンパク量摂取が少ないことが、3年後の筋力低下と関連していることが、縦断的調査で確認されています。
高齢者ではアミノ酸が筋肉に供給されても、同化抵抗性があるために、筋肉タンパク質同化作用が若年者に比べると弱い可能性があると考えられています。また、筋肉タンパクの合成を促す為に必要な、不可欠アミノ酸の閾値が高く、血中濃度が高くなければ合成が促されないと考えられています。そのため、不可欠アミノ酸摂取量を若年者以上にしないと、筋肉の同化が誘導されないと考えられます。
生活習慣病などの疾病によりタンパク質の摂取制限が必要とされる場合に、サルコペニアの予防や改善のために必要となる不可欠アミノ酸の摂取を如何にするかという問題が生じますが、栄養補給に加えて適切な運動を行う事で問題は解消されると考えられます。
1日に高齢者が摂取するタンパク質の量は、75g以上/日と考えられます。平成22、23年国民健康・栄養調査の結果では、タンパク質摂取量の平均値は、男性では、70歳以上:71.9g/日(標準偏差:23.4g/日)、女性では、70歳以上:61.5g/日(標準偏差:19.9g/日)となっています。
1日のタンパク質の必要量を男性では、ほぼ摂取できているように思われますが、標準偏差が23.4と大きいことから、ばらつきが非常に大きいと見なすことが出来ることから、かならずしも十分なタンパク質摂取が為されているとは考えられず、タンパク質の摂取量は非常に個体差が大きく、栄養管理の注意が必要であると考えられます。
サルコペニアの予防や改善のためには、規則正しい食生活を送ることで、良質のタンパク質や栄養素を毎食摂取しながら、適切な運動を行う事が必要と考えられます。
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