老年期の課題として、ハヴィガーストは6つの発達課題を示しています。
①体力や健康の衰えに適応すること
②引退と収入の減少に適応すること
③配偶者の死に適応すること
④同年代の人々と親密な関係を結ぶこと
⑤社会的・市民的義務を果たすこと
⑥身体的に満足出来る生活環境を確立すること
老年期には、発達課題の一番目にある「体力や健康の衰えに適応すること」という大きな命題をこなして行かなくてはなりません。ところが多くの場合には、体力や健康の衰えに適応することが難しく、様々な老年期特有のこころの老化が見られるようになります。
<心気性>
●生活や健康に絶えず不安を持つ:外界から自己の内面へと関心が移るにつれて、健康状態が気になり、少しの症状を病気と結びつける傾向が出て来る
●容易に鬱状態を起こす
●身体の働きに異常に高い関心を持ち些細な身体異常にとらわれる
<自己中心性+頑固>
●興味が狭くなり自己中心的になる:知的能力の低下が環境への適応力を低下させた結果生じる
●頑固で柔軟性がなくなる
<保守性+内向性>
●保守的になり新しいことを嫌う:社会からの刺激が少なくなることによる
●慎重さ、用心深さ:生理的老化により反応速度が低下すると言うことが、慎重さに見えているのかも知れない
<猜疑心+ひがみ>
●猜疑心が強く被害感を起こしやすい:感覚器官、特に聴覚の機能の低下により生じやすくなる
※性機能は衰えても性欲は衰えないことを憶えておかなくてはなりません
こころはどこにあるのかと言えば、≪脳≫であると一般的には考えられています。確かにこころは、≪脳≫にあるように思えますが、こころとからだとは互いに関連し合っており、「こころの健康は、からだの健康から」、「からだの健康は、こころの健康から」と言えるくらいに、こころはからだは互いに影響し合っていると考えられます。
こころは、脳が司ってはいるものの、からだがこころに影響を及ぼしている事を考えると、こころにもホメオスタシスがあるのではないかと考えられます。こころの健康が保たれて、自己治癒力、自然治癒力などが見られるのは、からだと同様にホメオスタシスによって支えられているためではないかと思われます。
こころの老化は、老化に伴う生理的・病的老化により、ストレッサーに対するストレス耐性やストレス反応の治癒力が低下することが見られるように、からだの老化と同じように、抵抗力や自己治癒力、自然治癒力が低下するものと考えられます。
こころの老化は、[疲労しやすい]、[視覚の衰え]、[疲労回復が遅い]などのからだの老化に影響を受けて、興味の消失や意欲の減退などが生じて、新しいものや新しいことに取り組む事が難しくなったり、「やっていることで精一杯」、「やれることの減少」、「やりたいことの喪失」が見られるようになります。
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