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歩行機能の老化は身体だけでなくと脳の老化にも関連があります

歩行機能は、ヒトが生まれてすぐに行える機能ではなく、障害がなければ生後およそ1年で2足歩行が可能にあなるという機能であります。旧い介護保険要介護・要支援認定調査の基準では、上下肢の麻痺についてのチェックは、該当の上下肢に筋力の低下が見られる事を特記事項に記載があれば、麻痺はあるとすることが出来ました。そのため、調査員によっては、下肢麻痺があるとするとともに、「下肢の筋力低下により歩行が不安定」という特記事項を書いていました。

歩行という行為を考えて見ると、歩行が不安定という状態が、下肢の筋力低下だけで生じるものではありません。歩行の不安定さが下肢の筋力低下だけであったならば、ヒトは、≪寝返り⇒いざり⇒四つ這い⇒つかまり歩き⇒二足歩行≫という過程を経て、ようやく二足歩行に至る経過の必要は無いと考えられます。

歩行は、目で歩行の環境情報を脳に送るだけでなく、足の皮膚感覚で歩行する地面の情報を送り、内耳の器官が平衡感覚に関する情報を送ることで、脳が歩行の動作について決定して、下肢だけでなく、四肢体幹と頭頸部の筋・運動器官に指令を出して、さらに筋・運動器官や知覚・感覚器官からフィードバックを受けながら行われる行為となります。

歩行は、筋・運動器官と知覚・感覚器官との協調、連合によって行われ、フィードバックが適切に行われることで成り立つ行為であるために、筋・運動器官と知覚・感覚器官のいずれかの機能や両方の機能の低下や支障は、歩行は不安定になったり困難となり、フィードバックに支障が生じれば、立ちすくみや歩行不能となってしまうことが考えられます。

歩行とは、ヒトが重力に抗して二足歩行を行うという行為であるために、歩行を始めて続けるという動作は、身体全体だけでなく身体と脳の機能・状態がかかわる複雑な仕組みになっています。加齢にともなう身体や脳の生理的老化によって、歩行の変化は様々な原因と形で生じると言えます。歩行機能の維持・継続のために、身体や脳の機能が補い合って、状況によっては正常な機能を変化させたり放棄することも見られます。

歩行機能は、身体と脳との協調・連合による機能である事から、日常生活での心身の健康維持を図る事が大切であり、単なる筋力低下と考えて筋力トレーニングや歩行動作の見直しなどを行うだけでは、必ずしも改善できるものではないと思われます。

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