脳機能の加齢による形の上で見られる変化は、脳の萎縮や脳実質の変化、動脈硬化が見られます。
脳の萎縮は、生理的老化と病的老化とでは、その経過や形態が異なっています。生理的老化では、脳の萎縮は広い範囲(びまん性)に萎縮が見られ、神経繊維がつながり合っている部位ごとで、灰白質と白質の比率や、各脳葉間の比率などが一定になるように、バランス良く萎縮する傾向があります。病的老化では、脳の萎縮は頭頂葉、側頭葉、前頭葉などで、局所性の萎縮が引き起こされます。
大脳皮質は、6層の細胞層から出来ており、各層が縦に連絡して機能を司っています。生理的老化では、皮質の表面積と容積は減少するものの、皮質の厚さと構造とは変化がありません。病的老化では、皮質の厚さや構造の変化・変性が見られます。
脳の生理的老化による萎縮では、脳の機能低下が量的低下として現れ、脳の病的老化による萎縮では、脳の機能低下が質的低下として現れると考えられます。
脳の加齢による細胞数の変化は、脳の部位によって減少の程度が異なり、皮質では明らかな減少が見られますが、生命維持に重要な役割を持っている脳幹では、細胞数の減少が見られない部位があります。
<図1>脳実質の加齢性変化
脳実質の加齢による形態的な変化のうち、老人斑や神経原線維性変化は生理的老化でもアルツハイマー病でも見られますが、量やパターンが異なります。レピー小体やピック小体は、生理的老化ではほとんど認められず、病的老化による変化と考えられています。
脳の加齢による生理的老化による変化は、情報の伝達の遷延、情報量の減少、情報の統合・処理能力の低下により、刺激を受けてから反応を開始するまでの時間(潜時)が延長され、反応が不正確になってしまいます。
また、生理的老化により自律神経系の機能も低下が見られますが、ホメオスタシスは平常時は維持されていますが、ストレス状態となった場合には、若年者に比べるとホメオスタシスの維持が困難になります。ストレス状態でのホメオスタシスの不調は、脳の自律神経系中枢の生理的老化による機能低下とともに、自律神経系、内分泌系の臓器・器官及び効果器の生理的老化による機能低下や予備能低下によるものと考えられます。
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