加齢に伴う生理的老化による温度感覚の変化は、温覚・冷覚の閾値の上昇が見られます。また、加齢に伴って暑さに対する反応よりも、寒冷に対する反応が低下します。
温覚・冷覚の閾値の上昇によって、温度の変化を認知するための温度差が大きくなってしまいます。50歳以下では0.5℃で温度差を弁別することが出来ますが、65歳以上になると1.0~5.0℃の温度差でないと弁別が出来なくなります。
温度感覚のうちで温度調節を行う感覚の変化は、若年者に比べると温度変化に対して、温度変化が開始してから、若年者よりも遅れて温度調節を行い始めて、調節温度の幅は広く安定した温度にすることが難しくなっています。
調節開始の温度が適温と感じられる温度より低い場合でも高い場合でも、若年者は、ほぼ一定の温度に調節する事が出来ますが、高齢者は高い温度からでは高く、低い温度からでは低く調節する傾向が見られることが確かめられています。
若年者は暑い季節でも寒い季節でも快適温は一定ですが、老年者は、高温環境に対する快適温が高く、低温環境に対する快適温が低くなっており、温度調節のための反応の遅れと快適温の乱れによって、熱中症や老人性低体温症の危険性が高くなると考えられます。
温度感覚の変化には、ストレッサーに対する過剰なストレス反応として、温度変化の著しい環境に曝された場合に、若年者に比べると、老年者は血圧の変動が大きく激しくなることがあります。
加齢に伴う生理的老化による体温調節機能の変化としては、体内での熱生産性の低下が生じます。体内での熱生産性の低下は、体温維持・調節のホメオスタシスの低下となります。平熱も下がることになります。
皮膚からの熱損失の増加や身体内部から外部への熱伝導を減らす皮膚血管収縮機能の低下は、低体温の危険性が増えることになります。寒くなると皮膚の血管が収縮して血流量が少なくなり、体内から熱が逃げる事を防ぐ仕組みになっていますが、加齢による生理的な老化に伴って、皮膚血管の反応性が遅れて、熱が奪われやすくなり、熱生産性も低下しているために、低体温となる可能性が高くなります。
加齢に伴う生理的老化によって、一日の体温リズムや体温の変動幅も変化します。若年者の1日の体温の変動幅は約1℃で、起床直前(午前4時ころ)に最低体温になり、昼から夕方にかけて最高体温が維持されて、夜になって下がり始めます。
加齢による生理的老化に伴って、体温の変動幅が小さくなり、就寝時の体温の低下が少なくなります。体温が上昇・下降する時刻が若年者に比べると、約1~2時間ほど早くなります。体温が下がる程に睡眠は深くなりますが、体温の低下が少ない老年者の眠りは浅くなってしまいます。
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