老年期では、加齢にともなう老化のきっかけや老化を進めるきっかけとなるような、からだやこころの変化だけでなく、立場・役割の変化や喪失による社会生活の変化を、老年期では数多く経験することになります。確かに、青年期や壮年期などに比べると、社会生活の変化が生じるとからだやこころの老化が生じていることから、新たな体験や出会い、取り組みを行う事が難しくなることは事実ではあります。
しかし、老年期となって、社会生活の中での立場・役割の変化や喪失を経験することは、誰もが喪失の事実を受け止めることで、多少の喪失感を受けることはあったとしても、それだけですべての社会生活が衰退へと向かってしまうことになるとは限りません。
社会生活を送って行く中で、立場・役割の変化や喪失は、その人にとってストレッサーとなり、ストレスを感じる事は確かであります。それぞれのストレッサーに対するストレス耐性やストレスの質や内容は、その人が持っている生活環境や生活習慣、人間関係などだけでなく、これまでの生活経験の積み重ねや行動様式、性格などによって定められます。
社会生活の変化によって、人が大きなストレッサーを受ければ、大きなストレス状態に至る場合もあり、一時的に老化が進んだように見られることもあります。この老化が進んだ状態は、ストレス状態からの脱却やストレス状態の改善が図られることで、解消されたり改善されたりする可能性もあると考えられます。
ある人のストレス状態の予後がどのようなものとなるかは、社会的動物とヒトは言われて、人は独りでは生きて行く事は困難と考えられることから、人とのかかわりが大きな影響を持つ事になります。
ある人が、≪どのように人とかかわって来たか≫、≪どのように人とかかわれるか≫、≪どのように人とかかわりたいか≫については、その人のからだの老化とこころの老化・熟成、過去や現在の生活経験や生活状態、行動様式によって定まることになります。
加齢にともなう社会生活の変化は、喪失や喪失感を得ることになりますが、人とのかかわり方によって、大きく(病的)老化を進めることになる結果となる場合から、(病的)老化を押しとどめる結果となる場合まで、様々な様態を示すことになります。
介護職が介護ケアを提供する利用者が、加齢による社会生活の変化を受けながらも、住み慣れた環境で能力に応じた自律した生活を送るためには、ストレッサーの影響を最小する共に、ストレス耐性を高める取り組みを、チームケアによって行われることが求められます。そのためには、≪どのように人とかかわって来たか≫、≪どのように人とかかわれるか≫、≪どのように人とかかわりたいか≫を知り、利用者の尊厳を支えながら、利用者に添った介護ケアの提供に努めることが必要と考えられます。