老化は、「成熟期以降、加齢とともに各臓器の機能あるいはそれらを統合する機能が低下し、個体の恒常性を維持する事が不可能となり、ついには死に至る過程」(老年医学の基礎と臨床Ⅰ・株式会社 ワールドプランニング)と定義されています。
老化とは、ヒトの心身の機能が低下して、恒常性の維持が不可能なることで、ヒトが死に至る過程を意味することになります。恒常性の維持が、ヒトの老化によって、ある時になると突然に出来なくなるわけでは、必ずしもありません。
ヒトの恒常性の機能は、各臓器の機能や心身を統合する機能によって、包括的に維持されています。生理的老化による緩やかな各臓器の機能や心身の統合機能の低下は、恒常性の機能を、各臓器や心身の機能が包括的に維持して行こうとする働きにより、全体的には維持されることになります。
ヒトの生理的老化では、包括的な生体の恒常性を維持する機能で、恒常性の維持が全体としては保たれます。恒常性の維持が、全体として保たれたとしても、病的老化や疾病、障害などが生じた場合に、生理的老化によって心身の予備力が低下もしくは消失しているために、恒常性の維持をするための、免疫力や回復力、適応力などが十分に機能することが困難になります。その結果として、生体の包括的な恒常性の機能が低下するために、心身の機能に疾病や障害が生じることになります。
老化には、ストレーラーによると、4つの特徴があるされています。
1.普遍性(universality):老化は、すべての生命に共通して起こる現象であり、決して避ける事の出来ないものである。
2.内在性(intrinsicality):老化は、環境因子によっても影響されるものであるが、あらかじめ遺伝的に規定されていて、成熟後には必然的に生じる現象である。
3.進行性(progressiveness):老化は、突発的なものではなく、加齢とともに進行し、生体を構成する細胞や細胞間物質の変化が経年的に蓄積されて徐々に現れてくる過程に伴う現象であり、一度起こった現象は不可逆的である。
4.有害性(deleteriousness):老化の過程で出現する現象は、形態的・機能的な低下・衰退が見られ、生体にとって有害なものばかりであり、機能は直線的に低下して、死の確立は加齢とともに対数的に増加してゆく。
老化は、①外観的な変化が見られ、②無理が利かなくなり、③ホメオスタシスが働かなくなり、④代謝機能の変化が見られ、⑤生体防御機能の低下が起こるとされています。老化は、誰にも起きるものでありますが、その一方で、環境要因、遺伝要因などの影響によって、その発現に大きな個体内差、個体間差がある現象ともなっています。