聴覚障害者数は、平成23年(2011年)12月1日現在では、約39万人が身体障害者手帳を取得しています。「生活支援技術革新ビジョン勉強会報告(2008年3月)」によると、高齢等に伴う難聴者や中途失聴者数は、500~600万人とも言われているということで、手帳を取得していない聴覚に聞こえの障害がある人の数は、手帳を取得している人の10倍以上にもなります。
聴覚障害の人とのコミュニケーションと言うと、手話や筆談を思い浮かべますが、平成18年身体障害児・者実態調査結果の「障害の程度別にみた聴覚障害者のコミュニケーション手段の状況(複数回答)」によると、補聴器や人工内耳等の補聴機器の使用が69.2%、筆談・要約筆記が30.2%、手話・手話通訳が18.9%、読話が9.5%となっています。
聴覚障害の人が情報をどのように得ているかは、平成18年身体障害児・者実態調査結果(重複回答)の「障害の種類別にみた情報の入手方法(複数回答)」による入手方法の比率で情報源を見てみると、テレビ(一般放送)が74.8%、一般図書・新聞・雑誌が66.7%、家族・友人が53.8%の順になっています。その他には、手話放送・字幕放送が15.7、ファックスが15.5%、携帯電話が11.7%となっています。
聴覚障害の人は、多くの人は補聴機器の使用によって聴力を補うことによって、聴力が改善されることで、コミュニケーションが行いやすくなっていると考えられます。補聴機器だけでなく、視覚からの情報を得ることが出来ることから、手話や筆談だけでなく、様々なコミュニケーション手段や機器を使って、情報を取得する方法が可能となっていることがわかります。
聴覚障害者のコミュニケーション能力を把握するには、「リハビリテーション研究 STUDY OF CURRENT REHABILITATION」1985年11月(第50号) 、ろう者コミュニケーションの諸問題(野沢克也)によると、以下のとおりとなります。
a.若い聴覚障害者で、助詞も用いて発声しながら、文法的な手話を用いている場合には、文章能力がかなりあると思って良い。発声が殆どなく、用いる手話が文法的でない場合は、文章力が小学3、4年程度と考えて良い。
b.50歳以上の聴覚障害者の場合、口話教育より手話教育を受けた者が多く、この場合はちょっと筆談してみて、その程度を確認すること。
c.不就学者、小学部退学程度の時は、筆談は期待できないと考えてよい。込み入った話し合いは、手話や聴覚障害の特性に熟達していないと難しい。
聴覚障害者のコミュニケーションは、その人のコミュニケーション能力に応じた方法を選んで行う事が必要であり、補聴機器を使用していたとしても、すべての言葉をはっきりと聞き分けられる訳では無いことから、かかわる人の配慮と工夫が必要となります。