ヒトは、生まれることで加齢に伴って成長が始まります。成長は、機能によって加齢の時期が異なりますが、成長の到達点、終点が必ずやって来ます。成長の到達点、終点は、老化の始点、起点となり、加齢に伴い老化が進んで行くに従って、生理的老化や病的老化が顕在化して行きます。
介護保険制度は、加齢に伴う生理的老化や病的老化によって、日常生活に支障が生じている高齢者などに対して、「住み慣れた環境で能力に応じた自律した生活を行うため」に、介護ケアのサービス・支援の提供を行いながら、社会全体で支えることを目的とするものであります。
介護保険制度が、老化による介護ケアを必要としている高齢者などを、社会全体で支えることを目的としていても、高齢者などが介護ケアを利用することになった理由や事情は、老化だけでなく様々なものがあることが現実であります。
介護ケアの利用者が持つ介護ケアに対する思いは、介護ケアを受ける前、受け始める時、受けてからと変化して行きます。介護ケアに対する思いがどのようなものであるか、介護ケアに対する思いがどのように変わっているかを、介護ケアを提供する介護職は、常に意識して知る(把握する)ことが必要となります。
介護ケアに対する思いは、介護ケアの提供という行為によって変わって行きますが、加齢に伴う老化によっても変化して行くものであります。加齢に伴う老化は、誰にも押しとどめる事が出来るものではありません。加齢に伴う老化は、利用者以外には明らかであっても、利用者には意識されない、意識下に押さえ込まれていることがあります。
介護ケアと老化とは切り離せないものであり、利用者が主体となる能力に応じた自律した生活を行うための介護ケアの提供には、利用者の老化に対する思いがどのようなものであるか、老いと向き合う、老いと付き合う思いがどのようなものであるかを知ることが必要となります。
利用者の老いと向き合う、老いと付き合う思いは、利用者の生活歴、社会性、生活環境、生活習慣など様々な要因が影響し合って形作られているものです。利用者の老いに対する思いを知る事は、利用者に添った介護ケアの提供を行うための重要な手立てとなります。
多くの利用者の老いと向き合う、老いと付き合う思いを知ることは、介護職が利用者に添った介護ケアの提供を行うためだけでなく、介護職の生き方、いずれやってくる加齢に伴う老化によって顕れる老いと、どのように向き合うか、どのように付き合うかを、利用者から教わることにもなると思われます。
介護職は、利用者とのことばや文字による言語コミュニケーションだけでなく、利用者からの非言語コミュニケーションによる情報を、五感を使うことによって得る事で、利用者の思いを知る事が必要となります。