介護職員は、訪問介護サービスの直行直帰型の登録ヘルパーでも労災保険法の対象となります。訪問介護を行う訪問介護員は、感染症や過重労働などが原因となる健康障害や、移動中の事故など労働災害を被るリスクを常に持っています。訪問介護員は、労働災害に対しての予防対策を万全に取るとともに、十分な補償がなされなくてはなりません。
労災保険は強制加入の制度なので、労働災害発生時に加入の手続きが行われていなくても、発生前へ遡及して加入手続きが可能となっています。
介護職員に多く見られる労災事故は、①サービス移動時の交通事故、②通勤、帰宅時の交通事故、③腰痛、ぎっくり腰、④疥癬などの感染症となっています。
労災認定されるためには、仕事中に発生した傷病については「業務災害の労災認定基準」を、通勤途中に発生した傷病については「通勤災害の労災認定基準」を満たしていることが必要となります。介護職員の職業病と言える腰痛については、不自然な作業姿勢や重量物の取り扱いなどの腰部に過度の負担がかかる業務によって生じた場合には、業務災害として認められることがあります。
腰部に過度の負担がかかる業務とは、①おおむね20kg以上の重量物などを繰り返し中腰で取扱う業務、②腰部にとってきわめて不自然な姿勢などで毎日数時間程度行う業務、③長時間にわたり腰部の伸展を行うことのできない同一作業を持続して行う業務などが挙げられ、腰痛や椎間板ヘルニアなどの疾患と身体介護業務に長時間にわたって従事していることによる発症に因果関係が証明されるのであれば、保険給付を受けることができると考えられます。
労働災害には遭わないような職場環境、労働環境を整備することが、介護サービス事業者だけでなく国の責務だと言えますが、国や介護サービス事業者が質の高い介護ケアの実現をどれだけ本気で目指しているのか疑問に感じてしまいます。
介護職員にとって「おおむね20kg以上の重量物をくり返し中腰で取り扱う業務」をはじめとした労災認定の要件となっている業務は日常的な作業となっています。介護職員の処遇改善策として、腰痛対策だけではなく全般的な健康対策を早急に行うことが、質の高い介護ケアの提供を行い、利用者を主体とした介護ケアのためにも、国や介護サービス事業者に求められます。