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HIVは治療法の進歩で慢性疾患と考えられるようになりました

エイズ(AIDS:Aculred Immunodeficiency Syndrome)は、HIV(ヒト免疫不全ウイルス)に感染し治療を行わないままでいることで、徐々に免疫機能が失われて行き、厚生労働省が定めた合併症が発症した場合に、エイズ(後天性免疫不全症候群)と診断されます。

HIV感染によって必ずしもエイズを発症するとは限らなくなっており、適切な時期に治療を開始して、服薬治療を継続することで、エイズの発症を抑えることが可能になって来ました。

HIVは感染力の弱いウイルスで、熱や塩素に弱く、ヒトの体内に入らなければ生きて行けません。B型、C型肝炎に比べても感染率は低く、性的接触や血液の扱いに注意することで、日常生活で感染することはまず無いと考えられます。

HIV感染症は、HIVが体内に入り感染すると、平均で約10年(8~12年)でエイズが発症するとされています。HIVの感染者は、我が国では年間1500人以上の報告がありますが、そのうちの3割がエイズ発症後の報告となっています。若年者の疾患という認識が強くありますが、エイズ報告例の25%が50歳以上で、80歳以上の患者も報告されています。

<HIV感染からエイズ発症まで>

Ⅰ.急性感染期

HIV感染から1~2か月以内に、HIVの急激な増殖によりCD4陽性リンパ球が破壊されることで、カゼ症状に類似した発熱・のどの痛み・だるさ・下痢などの症状が出ることがあります。これらの症状は一時的なもので、数日から数週間で症状は自然に消失して行きます。

Ⅱ.無症状期

急性感染期の後は、自覚症状の無い無症状期が2年から15年以上、平均で約10年続きます。

無症状期の間にも、HIVは増殖し続けるとともにCD4陽性細胞が減少し続けて、免疫力が低下し始めます。免疫力の低下に伴って、●寝汗や発熱が続く、●頸部、腋窩、鼠径部などのリンパ節が腫れる、●疲れやすくなる、●下痢や食欲がなくなる、●体重減少などの症状が現れるようになります。

Ⅲ.エイズ期

HIVの増殖に伴いCD4陽性細胞の減少することで、免疫力が低下すると、健康なヒトでは免疫力で抑えることが出来る疾患である日和見感染症や悪性腫瘍、神経症が発症するようになります。厚生労働省が定めたエイズ診断基準の23種類の疾患と、1つでも診断された場合にエイズ期となります。

エイズ診断のための指標疾患:http://www.hok-hiv.com/knowledge/about/

HIV感染症の治療は、①HIV感染症の進行を遅らせるために、抗HIV薬の服薬を行う事で、HIVの増殖を抑え、HIVの数を減らしてゆく事を目指します。②日和見感染の予防と治療を行う事で、合併症による予後の改善を目指します。

抗HIV薬の使用によって、エイズの発症を遅らせたり、エイズになってもHIVを抑えて免疫機能(CD4陽性細胞)の回復が可能となり、日和見感染の治療方法も確立してきている事から、エイズによる死亡率は減少して、HIV感染症は慢性疾患のひとつと考えられるようになっています。

HIV感染症は、完治することはありませんが、慢性疾患として適切な服薬治療を継続する事により、エイズの発症の抑制や免疫機能の改善が図られるようになり、長期的に日常生活の維持が可能となってきています。HIV感染者の25%が50歳以上となっていることもあり、今後、介護ケアのニーズを持つHIV感染者がより一層増えてゆく事が予想されます。

HIVは非常に感染力の弱い病原性微生物ということから、HIVの感染対策はスタンダード・プリコーションの実践で充分であると考えられています。

<参考>

訪問看護・介護職員向けHIV感染症対応マニュアル/API-Net

http://api-net.jfap.or.jp/library/alliedEnt/04/pdf/manual.pdf



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