トップ > お役立ち情報TOP > 介護における安全の確保とリスクマネジメント > 結核は感染から1年以上数十年という発症までの期間があります

結核は感染から1年以上数十年という発症までの期間があります

結核菌は、空気感染によって肺の中に入り込み肺結核を起こすもので、結核の約90%を占めていますが、肺以外でも肺に出来た病巣から結核菌が頚や腋のリンパ節、胸膜、骨・関節、腎臓、消化管、皮膚などに到達して結核を起こす場合があり、肺以外の臓器や器官で結核の発病を肺外結核と呼んでいます。

結核菌に感染しても結核菌に対する免疫が結核菌を取り込んで核を作り、結核菌を静菌化して冬眠状態にするために、多くの人は発症することはありません。結核菌が冬眠状態にある場合には、結核を他人に感染させることはありません。

結核は、結核菌が冬眠状態になった後に、免疫力の低下などにより結核菌が繁殖をすることが出来るようになり発症するものが、成人の結核のほとんどで二次結核症と呼ばれています。

結核菌に感染しても結核菌に対する免疫が働かず、結核菌を静菌化することが出来ずに結核が発症する場合があります。結核菌の毒性が強いか、感染を受けたヒトの抵抗力が弱い場合に発症する結核を一次結核症と呼ばれています。BCGワクチンの接種は、主に一次結核症の予防を目的としています。

結核は、一次結核症の場合は、初感染後まもなく結核菌の繁殖が進み結核の発症に至ります。二次結核症の場合は、初感染後に結核菌が静菌化され冬眠状態となった後に、免疫力の低下などの結核菌が冬眠状態から繁殖することが出来るようになる(「再燃」という)条件が必要なことから、初感染より1年年以上、人によっては数十年を経ての発症となります。

結核の症状は、咳、痰、血痰、胸痛などの呼吸器症状と、発熱、冷汗、倦怠感、体重減少などの全身症状が見られ、肺炎やインフルエンザなどの呼吸器疾患と異なり、症状が緩やかに進んで行きます。2週間以上続く咳は結核のサインである可能性を考えて、医療機関の受診が必要と考えられます。

結核が発症しても、症状が進んで結核菌を排菌するようになるまでは、結核の感染源にはなりません。結核菌を排菌していなければ、基本的には入院の必要は無く、通院治療を行ってゆく事になります。

結核の治療は、多剤併用療法を行う事になり、治療の中断や適正な服薬が行われない場合には、薬剤耐性結核となることから、WHOは直接服薬確認療法(DOTS)による治療監視を求めており、多くの結核患者の治療に対して実践されています。

結核の予防は、規則正しい生活を心がけ、栄養バランスのよい食事と十分な睡眠、適度な運動などを行う事で免疫力をつけることが一番です。咳が出るときには咳エチケットを守ることや、咳が2週間以上続く時には、医療機関への受診をすることも必要です。

介護ケアの対象となっている高齢者は、結核が蔓延していた1950年代以前に生まれていることから、結核の既往だけで無く、結核に感染していながら結核菌が静菌化され冬眠状態になっている場合が多いと考えられます。加齢による生理的老化や病的老化により免疫機能の低下が見られることで、二次結核症や再感染の可能性は高くなります。



お読み頂いた記事は参考になりましたか?より有益な情報は会員限定のメルマガで無料配信しております。
矢印まずはメールアドレスを入力して会員登録してください。


関連記事
調理は病原性微生物を「つけない」「増やさない」「やっつける」が原則です
掃除は感染症の防止だけで無く利用者のQOLの改善にもつながります
洗濯は疥癬やシラミ、白癬などの感染症に最も注意が必要です
医療的ケアは利用者への感染と利用者からの感染に注意しなくてはなりません
身体の保清ケアは病原性微生物の排除と感染防御に役立ちます
排泄ケアはスタンダード・プリコーションの励行が最も求められます
食事介助は介護ケアの提供者が感染症の媒介者になるリスクがあります
口腔ケアは感染症予防と心身の健康を図ることにつながります
O157は常在菌のバランスの崩れが重症化の原因になると考えられます
肝炎ウイルスは5種類ありB型・C型肝炎が介護ケアでは問題となります

Facebookをされている方は以下より「いいね!」して頂ければ、定期的に情報を配信致します。