高齢者などの介護保険制度を利用している人々が感染症に感染することは、介護ケアのサービス・支援の提供を受けていることから、利用者とかかわる全ての人々の病原性微生物への感染と感染症の発病のリスクを負うことになります。高齢者は、加齢による生理的老化や病的老化などにより、抵抗力や体力が低下しているために、感染症が発病すると重篤化のリスクが高くなります。
介護ケアのサービス・支援を提供する介護職員は、病原性微生物や感染症に対して正しい知識と対策を知り、日々の業務の中で感染症の感染源や媒介者にならないための取り組みが求められます。
介護職員が日々の業務の中で、注意しておかなければならない感染症の対策のために必要なことは、①高齢者の特性や高齢者に起こりやすい感染症の特徴などを知ること、②感染に対する予防や発生時の知識や対応法を知り日常業務での実践すること、③介護職員自身が感染源・媒介者にならないための健康管理に注意することなどです。
高齢者に起こりやすい感染症について、感染源と媒介者、感染の特徴で感染症を分類すると、3種類に分けられます。
①高齢者や職員に感染が起こり、それぞれが媒介者となる可能性がある感染症は、集団感染を起こす可能性がある感染症です。主な感染症は、インフルエンザ、感染性胃腸炎(ノロウイルス感染症等)、腸管出血性大腸菌感染症、痂皮型疥癬(ノルウェー疥癬)、肺炎球菌感染症、結核などです。
②健康な人に感染を起こすことは少ないが、感染抵抗性の低下した人に発生する感染症は、集団感染の可能性のある感染症です。主な感染症は、メチシリン耐性黄色ブドウ球菌感染症(MRSA感染症)、緑膿菌感染症、VRE(バンコマイシン耐性腸球菌)などの薬剤耐性菌による感染症です。
③血液、体液を介して感染する感染症は、通常の生活上では感染の可能性が少ない感染症です。主な感染症は、肝炎(B型、C型)、HIV感染症(後天性免疫不全症候群・AIDS)、梅毒などです。
感染症は感染力が強いものばかりではありません。日常業務の中で適切な予防や対策が実践されていれば、感染症を零にすることは困難でも、制御することは可能と考えられています。