介護事故の中で転倒事故と同様に注意が必要なのが転落事故です。転落事故は、利用者に介護職員が移乗の介護ケアを行う際や、利用者が介護ケアを受けずに移乗を行おうとするために生じる事故や、車いす、椅子、ベッドからの転落があります。窓からの転落という重大な結果となり得る事故も生じています。
移乗時の転落事故には、加齢に伴う生理的老化だけでなく病的老化によって、歩行機能だけでなくADLの能力の全体的な低下という利用者の持つリスクが大きく影響しています。歩行機能とADLの低下によって、移動時の見守りや杖、歩行器などの介助器具の利用などの介護ケアの提供では、歩行の安全を図ることが困難な状態となります。歩行の安全を図ることが困難となれば、車いすなどの介助器具の利用が必要となり、その場合には移乗という行為がくり返し行われる事になります。くり返し移乗が行われることにより、そのたびに転落事故のリスクが生じる事になります。
車いす、椅子、ベッドからの転落事故は、利用者のADLの低下という利用者の持つリスクや、車いす、椅子、ベッドや床などの介護ケアの環境が持つリスクから生じます。
転落事故にかかわるリスクへの対応は、介護ケアの環境が持つリスクについては、利用者の身体状況に応じたベッドや車いす、椅子の利用を行う事になります。床材を転落しても安全な材質のものにすることや、ベッドの利用を中止して布団を使用するという方法も考えられます。
利用者の持つリスクについては、ADLの維持・改善を目指す日常的な介護予防、重度化防止の取り組みが必要です。利用者の日常生活の習慣や行動を知る事が、特にベッドからの転落については必要と考えられます。
介護ケアの提供者が持つリスクについては、介護ケアを提供する職員が利用者についての情報を共有して、利用者に添う介護ケアをケアチーム全体で協働して行う事が必要となります。他の介護事故でも同様ですが、ケアチームのコミュニケーションが円滑になり報連相が積極的に行われたり、ヒヤリハットが積極的に活用される事が、介護事故予防には効果的と考えられます。また、介護職員の健康管理も重要なリスク管理となります。