<ハインリッヒの法則>
1回の重症災害は海面上の氷山の一角であって、海面下に多数(29回)の軽微な傷害を伴う事故とさらに一段と多数(300回)の無傷害事故が潜んでいる。すなわち、重症災害の発生した底辺には作業者がヒヤリとした無傷害事故があったはずであって,このヒヤリとした事柄を一つ一つ対策をたて改善することによって,災害を未然に防止することができる。
出典:平成24年度福岡市介護保険事故報告書より
ハインリッヒの法則は、労働災害や医療事故などに関する有名な法則で、「1:29:300の法則」とも呼ばれています。300のヒヤリハットを見逃すことは、29の軽微な介護事故や介護ケアの失敗を見逃すことにつながり、さらに1つの重大な介護事故が生じる結果につながるという事です。
介護事故はいつでもどこでも起きるもので、零にすることは不可能ですが、重大事故を無くすためには、介護事故やヒヤリハットの情報を分析・活用することが、介護ケアの質を向上するための貴重な指針として、施設全体で共有する取り組みを行う必要があります。
介護事故やヒヤリハットの報告は、責任の追及が目的ではないことを、周知徹底する必要があります。事例を積み重ねて行くことで、本質的な介護事故の原因や介護ケアの問題点を抽出し、介護サービス事業所の運営の改善や介護ケアの業務手順の見直し、介護ケアの提供者の介護技術の向上などへの取り組みにつなげて行く事を目的とします。
介護サービス事業所全体が、介護ケアの提供で生じたヒヤリハットやミス、事故についての報告や情報提供が職員自身、介護サービス事業所、利用者や家族にとって必要であること、介護サービス事業所全体の介護ケアの向上と職員のスキルアップにつながるという考え方を共有するだけでなく周知徹底することが必要です。
ヒヤリハットだけでなく、報告は義務的に書類を作成すればそれで良しとすべきものではありません。ヒヤリハットの延長線上には、軽微な介護事故や介護ケアの失敗があり、その先には重大な介護事故が待っている事を忘れてはなりません。
介護職は、介護事故予防のためだけでなく、介護職自身の専門職としての介護ケアの知識、技術、態度等を向上させるためにも、ヒヤリハットした場合には、そのまま介護事故にならなくてよかったと見過ごすことはもちろん、ミスをしたので責められると黙っておくことをせずに、リスクマネージャーに報告をすることが必要であります。