利用者個人を特定できる情報(氏名、生年月日、住所など)と利用者個人の特定の情報(心身の状態、生活状況、サービス・支援内容など)とを、介護サービス事業者が利用者から取得して、維持、利用する取り扱いを定めたのが、「個人情報保護法」と「医療・介護関係事業者における個人情報の適切な取扱いのためのガイドライン」です。
介護サービス事業者については、個人情報保護法とガイドラインよりも介護保険法に基づく「指定居宅サービス等の事業の人員、設備及び運営に関する基準」が優先する事になっています。ガイドラインが介護サービス事業者が明らかに必要とされる個人情報の取り扱いについて、利用者への公表や利用者からの同意は必要ないとしています。介護保険法に基づく指定基準で、利用者及び利用者家族の個人情報の取扱について、サービス利用開始時に文書により同意が必要と定められている場合などには、指定基準の定めに従う事になります。
ガイドラインでは、介護サービス事業者が取り扱う個人情報や通常の業務で想定される利用目的について、具体的に例を示しています。
介護関係事業者における個人情報の例
ケアプラン、介護サービス提供にかかる計画、提供したサービス内容等の記録、事敀の状況等の記録 等
通常の業務で想定される利用目的
通常の業務で利用される個人情報については、改めて利用者からの同意は必要ないと考えられますし、「匿名化」を行う必要はありません。
ガイドラインで個人情報は、「匿名化」を行う事で個人情報に該当しなくなり、第三者への提供や事例発表などが可能となるとしています。事業所外では利用者個人を特定できる個人情報を匿名化することで、個人情報保護法の個人情報にはならない場合でも、匿名化の方法によっては、事業所内ではその情報で個人が特定できる場合があります。また、利用者個人の特定の情報だけで個人が特定できる場合があることから、匿名化について利用目的や利用者等に配慮して慎重に行われる必要があるとされています。
守秘義務は、個人情報が個人の秘密として捉えており、介護職が業務で知り得た個人の秘密を、通常の業務にかかわりの無い者に秘密を知らせたり、漏らしたりしてはいけないこと、介護ケアに関連する会議などで使用する際には、事前に文書での同意を得ることなどを必要としています。
守秘義務は、秘密を他人に知らせてはいけない、漏らしていけないということから、秘密を知っている自分以外に、秘密を伝えることが出来ないという訳ではありません。
通常業務にかかわりのある介護ケアのケアチームは、介護職と同様に守秘義務を負っている専門職者や、業務・活動の性格から個人情報保護法のガイドラインに沿う立場、役割のメンバーで構成されています。ケアチームの個人情報の提供、共有は、個人情報保護法はもちろん、守秘義務も全て禁じている訳では無いことを理解しなくてはなりません。
より良いチームケアのためにも、専門職が起こしがちな個人情報保護と守秘義務への誤解を、介護職は持たないようにする必要があります。
図1:医療・介護関係事業者における個人情報の適切な取扱いのためのガイドライン 厚生労働省
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