利用者主体の介護とは、利用者が高いモチベーションの上で自己選択、自己決定をして、「やっていること」と「やれること」との落差の解消を目指したり、さらには「やりたいこと」へ取り組むことによって、住み慣れた地域で本人の能力に応じた自立・自律した生活が行えることを目的とするという事であると言えます。
介護を必要としている利用者は、加齢に伴う生理的老化や病的老化、その老化に加えて生じる生活不活発病などによって日常生活の自立が困難となったと感じていると思われます。そして、介護が必要と感じる前の日常生活へ少しでも戻るような介護サービス・支援を受ける事を期待していると思われます。
介護サービス・支援の提供を受ける利用者は、介護保険制度が目指す「自立した日常生活」に出来るだけ戻りたいとは思っているでしょうが、利用者が主体となって介護予防、自立支援、重度化防止などを目指した介護が行われる事を、望むどころか予想すらしていないのではないかと思われます。
介護保険制度が目指している介護予防、自立支援、重度化防止という目標は、利用者主体の介護を行うに当たっては、目標として利用者が認知して自己選択、自己決定をおこなって、目標到達のために高いモチベーションを持って、介護サービス・支援を利用する事が望ましいと思われます。
介護サービス・支援を受けるのではなく、利用するという利用者の選択、決定には、自立した日常生活を送る事が普通に出来ていた時から、介護予防、自立支援、重度化防止という目標を理解し、加齢に伴う老化について、生理的なもの病的なものがあり、生活不活発病の原因や症状を理解して、介護予防の取り組みを行うだけの欲求の段階への到達とQOLの高さが必要と考えられます。
利用者側の欲求段階やQOLが高くても、介護サービス・支援を提供する介護職の専門性が高くなければ、当然ながら、利用者が求める介護が提供される事は困難となります。
介護職は、介護サービス・支援の提供を通して、心身の状態だけでなく利用者の日常生活全般にわたって、あらゆるものを知りうる立場にあります。利用者主体の介護を行うためには、利用者のあらゆる事を知ることは必要なことであり、場面に応じた適切な距離感を持ちながら利用者に添う介護サービス・支援が提供される事が、利用者主体の介護につながって行きます。
301207