自立を支える介護には、自律を支える介護がまず必要となります。自律を支える介護は、利用者本人の自己決定を得る事によって、利用者と協働した介護のサービス、支援の提供を行う事が可能となります。
自己決定については、「バイスティックの7原則」という介護職はもちろんのこと、広く対人支援をおこなう専門職者なら誰でも知っておかなくてはならない、対人支援者の基本的な姿勢を示した原則の中に含まれています。「バイスティックの7原則」には、「自己決定の原則」だけでなく介護職を含めた対人支援を行う専門職に求められている姿勢が含まれています。
①個別化の原則
②自己決定の原則
③受容の原則
④非審判的態度の原則
⑤秘密保持の原則
⑥統制された情緒的関与の原則
⑦意図的な感情表現の原則
この7原則は、基本中の基本として介護職としては、常に心がけておかなくてはなりません。
介護保険制度は、社会福祉制度としての側面を持ちながら、それまでの措置による介護サービス、支援の提供から、契約によるサービス、支援の提供が行われる事になりました。そして、サービス、支援の提供には、要介護・要支援認定申請に始まり、ケアマネージャーの選択、契約など、数多くの手続き、契約が必要となり、それには多くの自己選択、自己決定が求められるようになりました。
介護保険制度によって、介護サービス、支援を利用しようとする人々は、本人の能力に応じて自己決定が求められるようになりました。また、介護保険制度には、介護サービス、支援の利用については、自己選択、自己決定だけでなく、措置制度であった社会福祉制度での介護サービス、支援では、措置を行っていた行政が負っていた決定責任が、利用者本人の契約による自己責任に移りました。
介護保険制度となって、それまでの社会福祉制度での介護サービス、支援の量は明らかに大きくなって、サービス、支援の幅も広くなっていると考えられます。自由競争で事業者が提供するサービス、支援を、利用者が自己決定して、契約を行って受けるという事で、量的な面での自立を支える介護は、ある程度は行い得ると言える状況になりつつあると言えましょう。
介護保険制度が目指す、「本人の能力に応じた自立した日常生活」を送るには、ケアマネジメントが機能し、利用者本人の自己選択、自己決定により質の高い介護サービス、支援が提供されることによって、利用者のニーズへの対応も行われて、QOLを高め、エンパワメントを達成することが目的となります。
ケアマネジメント過程にある、モニタリングと評価と同様に、介護保険制度のモニタリングと評価が行われて、介護サービス、支援の量と質、サービス提供事業者の量と質とを常にモニタリングと評価を行う事が必要です。そして、モニタリングや評価が利用者だけにフィードバックされるだけでなく、社会全体に提供され介護保険制度が言っている「社会全体で高齢者を支える」仕組みが出来上がるように保険者である国・地方自治体はもちろんサービス、支援を行う事業者、団体などの社会資源も取り組まなくてはなりません。
介護の専門職である介護職員は、対人支援の専門職として、バイスティックの7原則を心がけながら、利用者の自己決定に基づいた、自立した日常生活を目指し、介護保健制度の社会資源の一つとして、介護保険制度が目指す社会全体で高齢者を支える仕組みが実現するような取り組みを心がける必要があります。
202104