介護の仕事は、利用者個人の生活の奥深くまで入り込み、個人情報と常に接しながらサービス、支援を提供している事になります。日常的に利用者と最も身近な専門職として仕事をする介護職は、利用者個人の権利を守る中心的な役割を果たすと同時に、個人の権利を最も侵しやすい役割となり得るという事を常に意識しながら、サービス、支援の提供を行わなくてはなりません。
介護保険制度となることで、公的介護サービスの多くは介護保険制度に移行して、それまでの措置から契約に変わる事で、契約という形で権利義務関係が明確になりました。また、介護保険制度におけるケアマネジメントが行われる事で、利用者のニーズの達成、解消へ向けたサービス、支援の提供が行われるようになりました。
介護保険制度で契約という形でのサービス、支援の提供は、その範囲が明確に定められた事で、サービス、支援を提供する側には、効率的なサービス、支援の提供を行う事が出来るようになりました。しかし、利用者は高齢であるだけでなく、疾病や傷害を持っている場合が多く、必ずしも心身の状態が安定しているとは限らず、常に変動が考えられます。また、加齢に伴う老化により、理解力、判断力が低下する場合もあり、経済的な損害を受けるような事件に巻き込まれることもあり得ます。
心身の状態の変化や経済的な事件だけではなく、日常生活上で個人の人権、権利が侵される、必ずしも介護職がサービス、支援を提供している場面で確かめられる事だけではありません。日常のサービス、支援の提供場面で、利用者とのコミュニケーションだけでなく、生活全体の小さな揺らぎをも見逃さない事が、人権・権利を侵害する問題に対して速やかに対応できるきっかけとなり得ます。
公的介護保険制度で仕事を行っている介護職は、契約によって介護サービス、支援の提供を行う介護職員としてだけでなく、社会福祉制度で支援を必要とする利用者にサービス、支援を提供する介護福祉の専門職である事も忘れてはなりません。