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QOLが注目された分野の歴史的変遷

QOLは、日本では経済成長が頂点に達して、先行きの不透明さが感じられるようになったころから、経済的な充足だけで無く、日常生活の充実を求めるという社会政策的な分野で言われるようになって、国をはじめとして様々な場面で取り上げられるようになりました。そして、国主導で豊かさ指標(社会指標、生活指標)が策定されましたが、評価対象の自治体からの反対で廃止となりました。

経済的な充足から日常生活の充実への政策転換という形で、QOLが注目されるようになった後に、医学分野でのQOL、健康関連QOLが注目されるようになりました。医療分野でのQOLは、元々、終末期医療などでは疾病と治療がQOLにどのように影響するか注目されていました。それが、広く健康関連QOLとして疾病や障害を生じた人への治療などの取り組みだけでなく、健常な人々が感じる心身の健康についてのQOLまでも注目されるようになり、特定の疾病向けの尺度や包括的な尺度が作成されています。

健康関連QOLに続いて、高齢化の問題が明らかになり、介護保険制度が開始されると、福祉分野、特に介護の分野でQOLについて注目されるようになりました。福祉分野では、障害者のQOLについては、健康関連QOLが注目されるようになった頃から言われるようになっていましたが、介護保険制度の開始によって、介護の質とQOLについて、高齢者(介護)政策の場だけで無く、実践の場でも論議、検討されるようになって来ました。

QOLは、WHOが定義とWHOQOL26という尺度を策定して、数量化が可能なものになっています。この定義と尺度は、世界標準、共通のものと認められています。WHOQOL26に限らず、基本的にはQOLの尺度の評価の方法は、本人の主観的な評価が基になっていますので、個人の心身の状態や経験などに大きく影響されるものと考えられます。

QOLは、本人の主観的な評価が基になりますので、評価の結果では高い数値が算出されても、必ずしも評価の対象となった方が感じているQOLがその通りに高いQOLであるとは限りません。反対に低い数値が算出されても、低いQOLと感じているとも限りません。

QOLは、主観的な評価となりますので、尺度を用いるなどの客観的と言われる評価結果と、本人が感じているQOLが逆となる、QOLのジレンマという結果が生じることがあります。QOLのジレンマは、支援を必要とする高齢者や障害者などの人々にかかわる専門職としては、サービス、支援を行う上でQOLとともに、介護における尊厳や人権について考える上で忘れてはならないことであります。



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