認知症になったからといって、何も一人でできなくなるわけではありません。新しいことを記憶するのは難しくなりますが、日常生活のなかで身に付いた習慣や得意だったことなどは続けられる人が多いようです。料理の得意な人にとっては料理を続けることが、活き活きとした生活を続ける支えにもなります。歌の好きな人にとっては、昔覚えた歌を歌える環境が穏やかに暮らせる場なのです。その人のできることを気がねなく続けられるような、よい生活環境は認知症の人の自立を助け、治療の効果も高まると言われています。
物質的バリアフリー
認知症の程度、見当識障害、視空間認知障害などがどの程度であるかを把握する必要があります。そのうえで、認知症の人が生活するうえでの安全の確保ができており、機能的である生活環境が必要です。また、認知症の人が現在できることは何かを確認し、その現存能力が活かせることが大切です。たとえば、料理をする手順などは覚えている人でも、今、コンロに火を付けたことは忘れます。ならば、ガスコンロではなく、温度センサー付きの電気コンロにするなどの配慮が必要です。そのほか、手すりの設置、段差の軽減、格納場所を大きく明記するなども必要でしょう。
認知症の人の自分らしく生活したいという希望を押さえ込むのではなく、失敗しても大丈夫な配慮をすることが大切です。
介護者と協同できる環境
認知症の人はさまざまなことを素早く理解し、行動に移すことはできません。自分で出来ないことが増えてくると、イライラすることも増えます。そうした感情の起伏や不安に寄り添えるような工夫が必要です。たとえば、いっしょに趣味を楽しみながら手助けできる空間や、いっしょに作業できるキッチンなど、介護者がいっしょに作業を楽しめるスペースの確保も安全を図るうえで大切です。