認知症は認知機能が衰えることによって言動や行動がちぐはぐになり、現実とのつじつまが合わなくなります。認知症の人は何もわからなくなっているのではなく、現実を(間違って)認知しただけなのです。その間違った自分の認知に合わせた行動、言動を行っているだけなのです。そのことを頭に入れて接することが大切です。
認知症の人が理解した事と、現実の隔たりを理解する
・混乱と焦り: 認知症が進行すると、本人が理解した状況と現実が異なる場合が多くなります。たとえば、家に向かって歩いているつもりなのに、家にたどり着かない。現実には家と逆方向に歩いていることもあります。こうしたとき、本人は混乱し、焦ります。
・不安とストレス: どんなに歩いてもたどり着けない家。やがて疲労し、不安になります。こんなケースもあります。朝、家族にケア施設に連れてきてもらった。昼寝をして目覚めると自分の居る場所がわからない。自分は自宅に居たつもり。ケア施設に来ていることは記憶に残っていないというケースです。混乱し、焦っている状況のときに、介護スタッフが親しく話しかけても、家族でもない人に話かけられて、さらに不安をかき立てることにもなります。このような不安感の継続は大きなストレスになります。
孤独・不快・被害妄想
自分が認知した事と現実が異なるという状況が続き、不安感やストレスが継続すると、自分は他の人とは違うことに孤独感を抱き始めます。自分は知らない人だと思っているのに親しげに話しかけてきたり、家に居るつもりだったのに、ここで過ごしましょうと説得されたり。自分は騙されて連れてこられたと思い込む人もいるでしょう。さらに、自分は家に帰ると主張しても、周りの人がその行動をとめようとすれば、不快な気持ちになり、被害妄想が生まれます。
こうした認知症の人の心理状況を理解し、本人の視点に立って接することが大切です。