認知症の人とその家族の訴えたいことに、まずは耳を傾けましょう
認知症の人からは「家族が自分のことをわかってくれない、ひどく扱われる」などの不満をよく耳にします。それが嫁の悪口になったり、身近に居て介護の中心になっている人への不満が多いようです。
一方、介護する家族からは「わがままで困る。暴言や暴力行為につい腹が立つ」といった不満の声がよく聞かれます。
こうした訴えの違いは、それぞれに理由があります。たとえば、認知症の人にとっては、自分が出来ていたことが出来なくなり、記憶が曖昧になっていくことへの不安が常にあります。自分への苛立ちや焦りを感じながら生活をしているのです。認知症の人の暴言や暴力行為の背景には、自分への不安や苛立ち、思うようにならないことへの歯がゆさといった感情が、身近な家族への不満となって現れていることが多いようです。
また介護をしている家族にとっては、認知症になった家族を心配し、すこしでも快適な生活を維持してほしいと願って、よかれと思ってサポートをしているのに、手助けを拒否したり、突然、怒り出したりされたのでは、感情的になって叱ることもあるかもしれません。
肯定することが第一
認知症の人にも、介護をする家族にもそれぞれの立場で不満や不安がつきまとい、自分のなかに溜め込みがちになります。こうした状況が長くつづけば、介護虐待へと問題が大きくなるケースもあります。認知症の人にとっても、介護をする家族にとっても、自分の不満や不安な気持ちを、誰かに聞いてもらうことで、それらは幾分解消され、冷静な気持ちを取り戻すことができます。介護を支える医療従事者は、まずは双方の訴えたいことに耳を傾け、「どうですね。そういうときは、ほんとうに大変ですよね」などのように同意を示し、その後で、アドバイスをするように心がけましょう。