認知症の初期には身近な人に対して被害者感情や嫉妬などが生じることがあります。こうした感情も「自分が自分でなくなっていくような不安や焦り」が背景にあるようです。
物盗られ妄想
「お金を盗られた」と騒ぎ出すことがあります。そのときは相手は認知症であることを言い聞かせ、感情的な対応を押さえてください。「いっしょに探しましょう」と協力的に接しましょう。このとき一緒に探すことが大事です。勝手に探して見つけると「盗んで隠していた」と思い込まれることがあります。見つかったら「よかったですね」と喜びましょう。決して、疑ったことを責めないでください。
暴言・暴行
認知症の中期に見られることが多い症状に、暴言を吐いたり、叩くなどの暴力行為があります。暴言を吐かれた家族は「世話をしてやっているのに、わがまま言うな」などと非難したり、力で押さえ込もうとしがちです。でも本人には「いきなり黙って身体を触られたからびっくりしたから怒鳴った」とか「介護の仕方によって痛い、苦しいなどの不満を伝えたいのに言葉が出てこないために叩いてしまった」などの理由があるようです。
まずは家族が落ち着いて、暴言・暴行の原因を考えてみましょう。認知症の人の身体をさわるときには、声をかけ「ここ、触りますよ、痛くないですか」など、驚かせないような工夫が必要です。
ケアの拒否
ケアの拒否で多いのは入浴のようです。認知症の人にすれば、「服を脱ぐのははずかしい、不安だ、その間に物を盗まれるかもしれない」あるいは「お湯が多すぎて怖い、滑りそうで怖い、温度が合わない」といった本人なりの理由があるようです。
入浴は身体を清潔に保つだけでなく、身体を温め、血行を促し、疲労やストレスを軽減させる効果もありますから、病気でないかぎりは促す工夫をしましょう。脱ぐのが恥ずかしいのなら、下着のまま。湯船が怖いのならシャワーでも良いと思います。無理強いをせず、本人の不安を取り除きながら、ケアのしやすい環境を作りましょう。