認知症の人の行動や言動は、非常識な行動や暴言にも感じられ、介護をしている家族にとっては精神的にも肉体的にもストレスの原因となります。ですが、認知症の人のそうした行動にも背後に理由があり、表現の仕方が常識では理解しにくいだけ、という場合があります。理由を探りながら介護にあたることも、ストレスをためない介護方法です。
徘徊
場所の認識や方向、時間などの認識が不明確になってくるため、「家に帰る」「捜し物をしている」などの理由で徘徊する認知症の人は多いようです。そのような場合は、「ここが家です」「物は無くなっていません」などと頭ごなしに否定しても感情的にさせるだけで、徘徊はおさまりません。たとえば「家に帰えりたい」という気持ちをくんで、「いっしょにご近所を散歩してみましょうか」など、気持ちを別の方向に向けさせることが大切です。「捜し物がある」という人には「いっしょに探しましょう」と声をかけると感心して動き回ることを止める人もいます。
介護する側が感情的にならずに、傍にいて、穏やかに対応することが大切です。
帰宅願望
家に居ても夕方になると「家に帰らなければならない」と言ってどこかへ行こうとしたり、ケア施設で過ごしていても突然「帰りたい」と出て行こうとする。こうした帰りたい気持ちは認知症の人に現れる感情のひとつです。
自分の居る場所がわからなくなるので、自宅であっても「家に帰えらなければならない」と不安を表現しているのです。また幼い頃に過ごした家に帰りたいと訴える場合もあります。
こうしたケースは、帰りたいという本人の気持ちに寄り添いながら、まずは落ち着かせることが大切です。「いま車を用意していますからね、いっしょに帰りましょうね。待っている間に、お茶を飲みましょうか」とか「今日はこれからいっしょに遊ぶので、一晩泊まっていってください。明日、いっしょに帰りましょうね」などのように気持ちを「帰宅願望」からそらせる工夫をしましょう。