肥満の状態を表すBMIは太っている、痩せている状態を示しています
肥満についてはBMIという指標が広く使われており、成人の健康診断の結果には必ずその数値が表示されていると思います。このBMIという数値は、【BMI(体格指数)=体重(kg)÷身長(m)÷身長(m)】という数式で算出されます。
BMIは【BMI<18.5】を低体重、【18.5≦BMI<25】を普通、【25≦BMI】を肥満と判定します。BMIでもっとも理想とされる数値である【BMI=22】となる標準体重では、生活習慣病などの疾病に罹患する可能性が低く、健康を維持するには最も良い体重であるとされています。
高齢者の肥満の問題は、太っているよりも痩せている方が高リスクです
肥満というのは幼児から高齢者まで健康を維持するには大きな問題とされていますが、《JACC Study・日本の高齢者における肥満度と総死亡との関連 玉腰暁子(http://www.aichi-med-u.ac.jp/jacc/reports/tamaa6/index.html)》を見てみると、高齢者の肥満(太っていること)と死亡リスクには関連性が低く、むしろ痩せている場合に死亡リスクとの関連性が高いというふうに考えることが出来ます。
この調査研究では、65歳以上の高齢者で【20≦BMI<30】の場合には男性、女性ともに死亡リスクが低い1倍以下となっており、男性では30以上でも1倍以下という結果が出ています。その一方で【BMI<20】では、男性、女性ともに1倍以上となり、【BMI<16】では男性は1.78倍、女性は2.55倍の死亡リスクとなる結果となっています。
高齢者の健康を考える場合には、成人のように太り過ぎを問題にするよりも痩せ過ぎについて太り過ぎ以上に問題として捉えて行かないといけません。痩せ過ぎることによって脂肪などによる身体全体の健康維持に資する余力が乏しく、その為に疾病に対する抵抗力や治癒力などが衰えてしまっていると言うことが考えられます。
低栄養(PEM)と高齢者の健康との関係に注目しましょう
痩せている事が高齢者の健康にとって、とてもリスクの高い事であることから、低栄養という事が注目されています。低栄養の事はPEM(Protein energy malnutriton)と言われており、BMIの数値との関連は【18≦BMI<19】を軽度の栄養不良、【16≦BMI<18】を中度の栄養不良、【BMI<16】重度の栄養不良と考えられています。
65歳以上の高齢者のPEMは、平成23年度国民健康・栄養調査では80歳未満はおおむね20%以下、80歳以上は20%以上となっており、そのうち男性の85歳以上、女性の80歳以上では30%以上という調査結果となっています。別の調査報告によると、在宅高齢者よりも施設入居者にPEMの率が高いという結果が多くあります。
PEMの原因には、①老化に伴うもの、②食生活によるもの、③生活環境によるものなどが考えられます。また、PEMは外面上で目立ちにくい事もあり見過ごされている場合も多くあると考えられます。肥満ももちろん注意が必要でありますが、場合によっては肥満であってもPEMということもあり得ますし、肥満が原因で疾病等になりPEMとなることもありますので、これからはBMIの数値が低い事に注意しなくてはなりません。
余談になりますが、高齢者施設を選ぶ際にPEMの意味はもちろん、BMIやPEMの入居者平均や年齢階層による分布についての資料があるかどうかを確認する事が有効な判断材料だと思われます。どんなに豪勢な食事が出されていても、生活環境が充実しているように思われても入居者のPEMの率が高いと言うことは、生活環境、栄養管理、施設の運営等が好ましくないと考えられます。栄養士、看護職はもちろんスタッフ全体でPEMへの取り組みを行っている施設を選ぶ事が快適な施設生活のポイントとなるかも知れません。