モノを運ぶのではなく、人の動きをサポートするということ
これまでの介護は、要介護者を「モノ」として考えているふしがありました。介護するにあたって重いモノを持つのは当たり前。そのため、重いモノを持つ介助者に対して、体の負担が軽減される持ち方の指導ばかりをしてきました。
例をあげますと、要介護者を車イスに移乗される時、体を密着させないと腰に負担をきたしますよ。といった具合です。
しかし、当たり前ですが、要介護者はモノではありません。
重度のマヒや意識がない状態でなければ、多少体に力は入りますし、動作もできます。
そのため、その要介護者の余力を使って介護をすれば介助者の負担は減りますし、要介護者も筋力の衰えが緩やかになるでしょう。
本来介護の役目は、要介護者のサポートであって全て請け負うことではありません。
誰しもが行う日常の動作を活かすことが大切です。椅子から立ち上がる時、布団から起き上がる時に無意識にしている行動を意識し、介助することでお互いにとって利点のある介護をしましょう。
人の動きとバランスの切っても切れない関係
日常で当たり前のようにしている動きの一つ一つにバランスが関係しています。
例えば、右腕、右足の側面を全てぴったりと壁に付けて立ってみてください。その状態から左足を真横に上げてください。立って足を上げるだけの簡単な動作ができないはずです。また、椅子に座った状態で第三者から額を抑えられると立ち上がることができません。
これは、「野口体操」の考案者である野口三千三氏が使った例題です。
ここで何がわかるかと言いますと、人の動きにはバランスが必要だということです。壁に体の側面をつけた時に足を上げられなかったのは、バランスが悪かったせいです。
片足立ちをする時、人は無意識に体を傾けてバランスを取っています。壁があり体を傾けられないと足を上げることもできません。逆にこのバランスさえ取れれば、力は最小限ですみます。
力よりバランスを重要視する介護
当初介護とは力さえあれば…という考え方でした。
この考え方では介助する側に負担が掛かり過ぎますし、要介護者側もすぐ筋肉が衰えてしまったり、体を動かすことが面倒になったりするため、自立する生活ができなくなってしまいます。
しかし、人の動きは全てバランスであるということは、介助する側もバランスを重視する介護方法を実践すればよいのです。
要介護者のバランスを重視しサポートすることで、介助側の力も少なくてすみます。
また、要介護者も全て介護されるのではなく、自分が動くことで出来る範囲が増えるとなれば、自信につながり自立した生活を続けることができるのです。