マヒがある方の中には、お湯がたっぷりはってある浴槽に力の入らない足で入り転んでしまったら…という恐怖から最初についた手をその場所から動かせないという方もいらっしゃいます。
そんな時は一度ついた手を離さずに出入りできる方法で介助しましょう。
基本的に浴槽に入る・浴槽から出る介助の方法は前回、前々回のコラムと同じですが、
改めて順序をおって紹介いたします。
<浴槽に入る>
(1)
要介護者がバランスの取りやすいと思う位置に(浴槽のふちに)手をついてもらいながら、マヒのない足を自分で浴槽の中に入れてもらいます。その時、介助者は背中に手を置き支えます。
(2)
次にマヒした足を介助しながら浴槽へ入れます。その時バランスが崩れやすいですので、背中に置いた手はそのままにしておくと安心してもらえるでしょう。
(3)
浴槽の底に要介護者の両足がきちんとついたことを確認した後に、お尻を両手でしっかり挟み込み前に押しながら浴槽内に入れます。
この時要介護者には、浴槽のふちについた手を支点に半回転してもらい浴槽の側面に向かって前かがみになってもらいます。
前かがみの姿勢のまま、水の浮力を使って湯船に浸かれるように介助しましょう。
<浴槽から出る>
(1)
要介護者が手をついている浴槽の側面の方に向かって前かがみになってもらいます。その時浮力を使ってお尻を浮かせてもらいましょう。介助者は、お尻を両手で挟み込み、前に押し出しながら洗い台に座れる位置まで誘導します。
(2)
要介護者のついている手を支点に半回転させながらお尻を洗い台に乗せます。
(3)
洗い台にお尻がきちんと乗っていることを確認したら、マヒしている足の方からゆっくり湯船の外に出します。
(4)
要介護者には、浴槽のふちについた手で体を支えてもらいながら動く足を自分で湯船の外に出してもらいましょう。その時介助者は、要介護者の背中に手を置いて支えましょう。
手を離さずに入浴することの利点
要介護者にとって入浴とは、浮力によって体が安定しなかったり、浴槽の床が滑りやすかったりと転倒する恐怖がたくさん潜んでいます。
そのため、手を離さず入浴すると手が命綱のような役割を果たし、安心して入浴することができるのです。
また、浴槽の側面との距離が短いため手だけではなく、足もつくことができ水の中でも安定することができます。
入浴することに恐怖を感じている要介護者には、恐怖を軽減することができる入浴方法なのです。