浮力を利用すれば、無駄な力を使わずに入浴できる
洗い台の上でも、浴槽のすぐ脇にまで移動できていれば、そこから先、つまり浴槽につかるのはそう難しいことではありません。特に和式の浴槽であれば、言い方は悪いかもしれませんが、ザブンと入れてしまっても大きな問題はありません。狭いために足がつっかえ棒のような役割を果たしますし、深いために浮力があり、大きな衝撃にはならないからです。
では、洗い台から浴槽への移動の仕方をご説明しましょう。
洗い台から浴槽への移動の仕方
洗い台の上におしりがしっかり着いていること、足が床に着いていることを確認したら、浴槽の縁に手を着いて安定性を確保し、まずは動く方の足から浴槽に入れてもらいます。この時、バランスを崩さないように、介護者は要介護者の背中を手で支えてあげると良いでしょう。
片足が浴槽に入ったら、動かない方の足を介護者が持ち、からだを回転させながらゆっくりと浴槽に入れます。両足が浴槽に入ったら、介護者は洗い台の上に膝を着き、要介護者のおしりを両手で挟むようにして持って、浴槽の中へと誘導します。
この時、要介護者には浴槽の縁の中でも最も安定する位置に手を着いてもらい、前かがみの姿勢になってもらいます。介護者は要介護者の動きを手で支える形になりますが、おしりを持ち上げるのではなく、押すような感覚で支えてあげるのがベターです。要介護者は動きやすく、また介護者にとっては余計な腕の力が必要なくなるため、負担が小さくて済みます。
浴槽の中にからだを全て沈める際には、浮力を利用しながらゆっくりと腰を下ろすように促しましょう。「心臓に負担をかけないために、湯量は胸の下あたりまで」と言う説もありますが、肩までしっかりつかるとよりリラックスできること、浮力が利用できることなどを考えますと、たっぷりのお湯を張っておく方が良いと言えます。
また、なるべくなら入浴剤などは使わない方が良いでしょう。というのも、浴槽の底が見えないと、不安がる高齢者も多いためです。
浴槽に入る時のポイントをまとめますと、「介護者は、要介護者のおしりを持ち上げるのではなく押すようにすること」「浴槽内のお湯はたっぷり張ること」の2点になります。是非、参考にしてくださいね。