“横向き”のトイレが、車イス利用者にとって便利な理由とは?
自力で歩くのが困難になった高齢者でも、寝た状態での排泄は不便で、かつ健康にも良くありません。排泄をする場所は基本的にトイレであるため、ベッドや手すり、車イスを使うなどしてトイレへ行く習慣をつけましょう。
車イスを使う場合には、トイレスペースの設計がポイント。高齢者用の居住施設では、車イス利用者のことも考えた設計になっているので大丈夫ですが、問題は自宅の場合です。
高齢者用の居住施設と同程度とは言いませんが、広さが十分であれば、施設と同じように車イスに座ったまま入れるように改修すると良いでしょう。
広さが十分でない場合は、便器が設置されている向きがポイントです。入り口に対して便器が横向きの場合は、ドアを引き戸にして左右に開閉できるようにし、手すりをつけて移動しやすいようにすればOK。からだを90度回転させるだけで、便器へと移動できるようになります。
問題は、入り口に対して便器が縦に設置されている場合。この場合、からだを180度回転させなければならず、移動が難しくなってしまいますので、便器の配置を変えるなど大幅な改修工事が必要になってきます。トイレの改修は介護保険の対象になるので、ケアマネージャーや自治体の窓口に相談してみてください。
片マヒの人の場合は、マヒしている側への移動が困難なため、マヒしていない側へ移動できるような工夫が必要です。そのため、便器の両側にスペースをとっておく必要があります。例えば右側にマヒがある人の場合であれば、便器の右側に車イスをつけ、左側にある便器へと移動します。移動が終わったら介護者が車イスを便器の左側に移動させ、要介護者が排便後に左側へ移動しやすいようにしておくのです。この場合、便器の左右にカーテンなどをつけて、要介護者のプライバシーを守ってあげられるような工夫もしてあげたいですね。
快適なトイレにするための4つの工夫
車イス利用者のためには、トイレ内の仕様も変えておく必要があります。具体的に、どのような工夫をすれば良いのか、ポイントを4つ挙げてみました。
1.入り口
トイレの入り口は、車イスでも入りやすいように段差をなくしておくことはもちろん、開口部には最低でも100 cmの広さが必要となります。開き戸ではなく引き戸にすることで、開閉が楽になります。
2.カーテン
便器の横に、座った状態で開閉できるようなカーテンを取り付けておきますと、トイレのドアを開け閉めする手間を省け、プライバシーを守ることができます。
3.手すり
便器の前に手すりをつけておけば、移動や立ち上がりの時に便利。便座の高さよりも20 cmほど高い位置に設置しますと、つかまりやすくなります。また、便座から手すりまでの距離は、40~60 cmほどがベストです。
4.ちり紙
例えば片マヒの人などは、ロール式のトイレットペーパーを両手で巻くのが困難です。そのため、手で巻く必要のないちり紙を用意してあげると良いですね。
和式から洋式への改修は、簡易式洋式トイレで簡単に
和式のトイレを洋式に変える場合、大規模な改修工事が必要になりますが、工事費を含めておよそ20~30万円の費用が必要になるため、決して簡単なことではありません。そこでお薦めしたいのが、簡易式の洋式トイレです。
これは、和式便器の上にかぶせるだけで簡単に洋式に様変わりさせられる、非常に便利なアイテム。和式のトイレは、便器までに段差があるタイプとそうでないものがありますが、それぞれに対応する簡易式トイレがあるので安心です。また費用も、2万円前後とリーズナブルになっているだけでなく、介護保険の対象になっていますので、気軽に改修することができるはずです。