テストフードを使って嚥下障がいを評価
健常者であれば、当たり前のように食べ物を食べ、飲み込むことができますが、嚥下(えんげ)障がいを持っている人は、そうはいきません。食べ物を飲み込みづらいだけでなく、自分では飲み込んだつもりでも、のどに食べ物が残っている可能性があります。食べ物が寝ている時やふとしたはずみで逆流し、誤嚥(ごえん)性肺炎を引き起こしてしまう危険もあるのです。そのために、食べ物をのどに残さず、しっかりと胃まで送る必要があるのです。
どの程度の硬さや大きさの食べ物を問題なく飲み込めるかどうかは、嚥下内視鏡テストや嚥下造影テストを行って調べるのが一般的ですが、自宅でもテストフードを使って簡易に調べることができます。テストフードは段階を踏んで使っていくものですので、その段階について、そして調べ方についてご説明しましょう。
段階を踏んでテストしよう
テストフードを使って行うテストは、水分から流動食、固形物、形や大きさが不均一な食べ物を食べられるか食べられないか、むせたりしないかを確認します。食べられることが確認できたらステップアップさせていきます。順番としては以下の通りです。
(1)水
(2)お茶やぶどうなどのゼラチンゼリー
(3)プリン(市販)
(4)ヨーグルト(市販)
(5)お粥、とろみ茶
(6)じゃがいもなどを柔らかく煮たもの
どの段階でも、むせたり呼吸がおかしくなったりしなければ、問題なく飲み込めていると考えて良いでしょう。逆に、むせたり、ガラガラ声になったりした場合は、嚥下障がいを起こしていると考え、食材に注意してください。
それでは、上記の食材を飲み込みやすいようにする工夫についてご紹介しましょう。
ゼラチンゼリーは濃度1.6%が理想
水やお茶などの水分は、嚥下障がいのある人にとって最も飲み込みにくく、危険を伴うものです。かといって、水分を摂らないわけにはいきません。そのために有用なのが「とろみをつける」、又は「ゼラチンゼリーにする」というものです。片栗粉などのでんぷんを使って、流れ落ちる程度のとろみをつけると飲み込みやすくなりますが、最も飲み込みやすいのはゼリー状にすることです。
ゼラチンゼリーは、1.6%の濃度が理想と言われています。その作り方の一例をご紹介しましょう。
まず、300mlのお茶(又はぶどうジュースなど)に5グラムのゼラチンを加えて鍋に入れ、火にかけます。鍋のふちが泡立ってきたら火を止め、粗熱をとったあとに容器に入れて、冷蔵庫で24時間以上冷やしてください。左右にゆらしてプルプルと揺れるくらいの硬さがちょうど良いでしょう。
ゼラチン粥がおいしくて便利
お粥は、温かいうちは食べやすいものですが、冷めるとのどにくっつきやすく、飲み込みづらくなってしまいます。でも、ゼラチンを使って作ったゼラチン粥は冷めてもおいしく、また飲み込みやすいですので、一度作り方を覚えてしまえば便利ですよ。それでは、ゼラチン粥の作り方をご紹介しましょう。
鍋で作る時は、鍋にお米と水(割合は1:5)を入れて火にかけ、お米が煮えたら水の2%分のゼラチンを加えながらかき混ぜます。とろみがついたら完成です。もっと簡単に作るには、耐熱性のある袋を使った真空調理法があります。袋の中にお米と水(割合は1:5)と、水の2%分のゼラチンを入れ、ストローなどで袋の中の空気を吸い出しておきます。袋ごと、沸騰しない程度のお湯で30分ほど煮たら火を止めて、20分ほど寝かします。袋のまま冷凍して保存することもできますので、作り置きしておくことも可能です。
ゼラチン粥は、応用しておはぎを作ることも可能です。ゼラチン粥をバットに入れて冷蔵庫で冷やして固めたら、一口大の大きさにカットしてあんこで包むのです。この時、あんこに10%程度の油を加えると飲み込みやすくなるため入れてみてください。
野菜の柔らか煮は押しつぶして
生の野菜は細かく刻めば良いと思われがちですが、それは間違いです。かえって誤嚥しやすいですので、一口大に切り柔らかく煮て、さらに熱いうちに押しつぶすと良いでしょう。固形物が飲み込みづらい人の場合は、だし汁とゼラチンを加えてミキサーにかけ、とろみをつけると誤嚥を防ぎやすくなります。
また、完全な栄養食と言われる卵ですが、ゆで卵はのどにひっかかりやすく、誤嚥の危険性が高いので避けたい食品です。そこで卵は、茶碗蒸しにすると食べやすく、又は温泉卵にすると飲み込みもスムーズです。