薬の副作用を抑えるために
体の機能改善に対して、薬は非常に有用です。痛みを和らげたり、また血圧や血糖値を下げたりなど、様々な症状に対して効果を発揮します。しかしその半面、副作用についても考えなければなりません。特に高齢者の場合は、服用する薬が多いために、それらの相関性によっては効果が薄まったり、副作用が出やすくなったりする場合があります。また高齢者の場合は、病気が長く続くことによって必然的に薬の服用期間も長くなります。そのために、知らぬ間に内臓に負担をかけていることもあるので要注意。薬の効果が弱まったり、薬の代謝や排泄が悪くなって副作用が出たり…ということもあります。
そうした副作用が出ないために、服用する人のことをよく知っている介護者や本人が、かかりつけ医になんでも相談できる関係を築いておくことが大切です。からだの一番の理解者は本人であり、少しでも調子が悪い時などは、率直に伝え、相談しなければならないからです。薬を服用する上で大切なことは、本人と医師、そして介護者がチームとなって治療・改善にあたるということです。
ちなみに、ドイツ語で薬は「ミッテル」と表現しますが、この言葉には「手段」という意味もあります。薬は病気による症状を改善する手段の1つですが、安易に投与しすぎるのも危険です。薬は確かに、人類が高いIQ(=intelligence quotient)をもって生み出し、そして発展を重ねてきた画期的なものです。しかし、それを上手く使っていくためには、治療や介護にあたる人々がチームとしてのEQ(=Emotional Intelligence Quotient)、つまり心の知能指数を高めることが必要なのです。
薬の判断は専門家に任せて
一般的によく使われる薬の中に睡眠薬があります。これは、使い方次第では質の高い睡眠を確保でき、なおかつ日中の活動の質をも高めてくれる有用な薬です。しかし、要介護者をはじめ高齢者は、ふらつきやめまいなどの副作用が出やすく、足腰が弱っていたりすると転倒して骨折…といった事態にもなりかねません。また、日中の眠気などを引き起こすこともあり、元気のなさからうつ状態と勘違いされたり、認知症を疑われたりすることもあるため、処方には細心の注意を払う必要があります。
まずは、夜眠れない原因を探ることが大切です。例えばからだのどこかに痛みやかゆみがあって、それが原因で眠れないということであれば、まずはそうした症状を抑えるような治療・投薬を考えなければなりません。また、昼寝をし過ぎて夜眠れない、というのもよく聞く話です。そうした場合は、日中の活動内容を工夫する、カフェインを摂る量を減らす、寝る前にホットミルクを飲む、部屋を暖かくするといった方法でも改善されることがあります。
認知症の場合、夜に徘徊することによって不眠や日中の体調不良を起こすこともあります。こういう場合では睡眠薬は有用です。ケースによって精神安定剤が処方されることもあります。睡眠薬も精神安定剤もかなりの種類がありますので、副作用が出ないようにするため、また本人に一番効果が出るようにするために、どの薬を選択するかはかかりつけ医とよく相談することが重要です。
かかりつけ医に対してはまず服用している薬を逐一確認しましょう。医師による診察を受ける際には必ず、他に服用している薬はありますか?という質問をされますので、服用している薬の名前を伝え、「それが効いているのかどうか」「副作用が出ることはないか」といったことも確認しましょう。自分でわからなければ、服用している薬を全部、かかりつけの医師や薬局に持って行き、専門家の判断を仰ぎましょう。勝手にやめたり、減らしたりしますと、症状が悪化することも考えられますので、決して自己判断はしないでください。飲むべき薬をしっかりと飲み、ちゃんと体にあった薬を使って症状の改善に取り組みましょう。