「憂うつな気分」、「気分が落ち込んでいる」、「気分が重い」などといった抑うつ気分が強くなり、抑うつ状態が続いた場合に、うつ病の可能性が考えられます。うつ病の診断は、ICD-10やDSM-Ⅳの診断基準によって行われます。
図1:DSM-Ⅳ 大うつ病エピソード診断基準(出典:みんなのメンタルヘルス/厚生労働省)
うつ病の患者は、我が国では2008年に100万人を越えています(104.1万人)。2004年の「うつ対策推進方策マニュアル」によると、うつ病の生涯有病率は、DSM-Ⅳ基準で6.5%、ICD-10基準で7.5%となっています。
うつ病の症状として、こころの症状、からだの症状や行動の症状が見られるようになります。
<こころの症状>
●憂うつ ●気分が重い ●気分が沈む ●悲しい ●不安である ●イライラする ●元気がない ●集中力がない ●決断力低下 ●好きな事がやりたくない ●無感動 ●細かいことが気になる ●自分を責める ●物事を悪い方に考える ●死にたくなる ●不眠・・・など
<からだの症状>
●食欲不振 ●疲労感・倦怠感 ●頭痛 ●肩こり ●動悸 ●胃の不快感 ●便秘・下痢 ●めまい ●口渇感 ●睡眠障害 ●性欲減退 ●月経不順・・・など
<行動の症状>
●表情が暗い ●涙もろい ●反応が遅い ●落ち着かない ●飲酒量増加・・・など
うつ病の治療には、休養と薬物療法、精神療法の3つが基本となります。
薬物療法では、脳内の神経伝達物質のセロトニンやノルアドレナリンの量を増やすことで、抑うつ状態の改善が見られることから、SSRI(選択的セロトニン再取り込み阻害薬)やSNRI(セロトニン・ノルアドレナリン再取り込み阻害薬)という抗うつ剤が多く使われるようになっています。
抑うつ状態の改善には、抗うつ剤が効果的です。抑うつ状態の改善のために、薬物療法を行いながら休養を取り、失われたエネルギーを補充することが重要となります。休養を十分に取りエネルギーの補充を行うことに加えて、うつ病(抑うつ状態)の引き金となった根本原因の対処のための取り組みやストレス耐性を高める取り組みとして、「認知行動療法」、「対人関係療法」などの精神療法が必要となる場合があります。
抑うつ状態が改善したとしても、薬物療法は主治医の許可が得られるまでは、減薬、断薬は行ってはなりません。自己判断の服薬調整は、病状の再燃や悪化を引き起こすことになりますので、薬物療法はうつ病の寛解後も継続して行う必要があります。